7歳と87歳がライバルに 巣ごもり中はスマホでも一首

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佐々波幸子
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 巣ごもりがこうも続くと、ストレスでいらいらしたり、退屈で暇をもてあましたり。そんなときは歌を詠むのがおすすめです。道具は紙と鉛筆あるいはスマホだけ、在宅でもちろんOK、年齢も不問です。10歳未満の姉弟と、80代の兄弟がライバルになる世界。あなたも、のぞいてみませんか。

コロナ禍の不安やいらだちを歌に

 新聞の歌壇は時代を映す。マスクを詠(うた)った作品が朝日歌壇に載り始めたのは2月下旬。現在は、週に約2500通届く投稿の多くがコロナ関連だ。

 〈しろたえのガーゼのマスクをベランダに大中小と並べ干す春〉

 この歌を詠んだ奈良市の山添聖子さん(41)は、小学4年生の葵さん(9)、新1年生聡介君(7)の母親だ。入学式は15分で終わり、自宅で過ごす日々が続く。「友達と遊べずストレスがたまるせいか、ささいなことでけんかが増えています」

 自身もイラッとする気持ちをこんな歌にした。

 〈毎日の三時のおやつは守るのに九時の就寝守らない子ら〉

 「歌にしようとすると、もう一人のおもしろがる自分の目が出てくる。それがあると、しんどさもちょっと楽になる」

 道具もいらず、場所もとらず、お金もかからない。葵さんの2歳の誕生日にふと思いついて投稿した歌が載り、うれしくなって続けてきた。

 〈タンポポの綿毛で練習したおかげ二歳のろうそくふぅーっと一息〉

 「あやしながらどこでも作れるので、子育てとの相性もよかった」と振り返る。5月3日付の朝日歌壇で入選は100首目に。歌は独学。選者の高野公彦さんの『短歌練習帳』(本阿弥書店)がバイブルだ。

 そんな母を見ながら歌を作り始めた姉弟は、最近の注目株だ。朝日歌壇に掲載されるのは4人の選者が10首ずつ選んだ、のべ40首。狭き門だが、葵さんはすでに30首が入選、聡介君とも2回並んで載っている。

 〈ゆりぐみのみんなとくるみせんせいとひろったどんぐりどこかへいった〉やまぞえそうすけ

 〈寒い朝学校で書く字はいつも男子が書いた字みたいになる〉山添葵

 どんなふうに作っているのか電話で尋ねると、「うれしかったり、発見したことが、短歌の種みたいになる」と葵さん。口に出した言葉が歌になることが多いという。聡介君は、「ようわからんけど、いいもの見つけたとき、五、七、五、七、七ってお手てで数えると短歌になっちゃうの」と教えてくれた。

 葵さんの初入選は4年前。載ったお祝いに、カップのアイスクリームを丸ごと食べたときのつぶやきが次の入選歌となった。

 〈ゆっくりとバニラアイスを…

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この記事を書いた人
佐々波幸子
文化部|歌壇担当
専門・関心分野
短歌、子どもの本、投稿(生活者の声)