第3回疲弊、交通事故、焦り…世界王者・桃田賢斗が示した覚悟

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照屋健
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バドミントン ライバルは中国に

新型コロナウイルスの影響で延期になった東京オリンピック。突如できた1年の時間は、アスリートたちにどう影響するのか。担当記者が探ります。

 突然のアクシデントに襲われた桃田賢斗(NTT東日本)は、来年夏に勝てるのか――。1月にマレーシアで交通事故に遭って以降、試合から遠ざかる世界王者にとって、延期でできた1年の時間をプラスに捉える関係者は多い。

 関係者によると、右眼窩(がんか)底の骨折の手術から復帰した直後の2月末は、スマッシュを全力で打てないなどの制限があったが、今は事故前の状態に戻りつつあるという。

 「良い意味で、プレッシャーから1度解放された。ここから、またスタートするんだ、という気持ちになれていると思う」。3月に話を聞いた男子シングルスの中西洋介コーチは、事故の影響について、こう語っていた。

 バドミントンは年間80試合近い公式戦を戦う過酷なスケジュールが組まれている。その環境で約2年間、世界ランキング1位の座を守り続けてきた桃田は、常にライバルから研究され、「追われる立場」だった。

 年間最多記録となった11度のツアー大会優勝を果たした昨年。華々しい実績の裏で、身も心も疲弊しきっていた。年末も6日しか休みがなく、五輪イヤーの幕開けとなった正月、周囲に「また苦しい試合が始まるのか」と漏らした。日本代表の朴柱奉監督は桃田の疲労を心配し、国際大会に出る回数を減らそうとしていた矢先の事故だった。

 「正直、この時期に試合に出られないのは致命的」と3月上旬の記者会見でいっていたが、心境は大きく変わったように見える。これまで五輪での目標を語ってこなかったが、この場で「金メダルを狙う」と宣言。覚悟を示した。

 ただ、ライバルが復調する期間にもなる。

 桃田は国際大会で2018年が74勝8敗、19年が67勝6敗と驚異的な勝率を誇る。そのなかで、同じ相手に複数回負けたのは、2敗した24歳の石宇奇(中国)と、3敗した23歳のギンティン(インドネシア)の2人だけだ。特に、19年秋以降、足のけがで思うような成績を残せなかった石宇奇が復活すれば、最大のライバルになる可能性が高い。(照屋健)

バドミントンの現在地

 4月28日付の世界ランキングをもとに五輪代表が決まるはずだったが、国際大会の延期・中止を受け、世界バドミントン連盟は改めて選考方法を発表する、としている。現行のルールでは、各種目最大2人までが代表に。男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)、女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)らが五輪代表をほぼ確実にしていた。

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