欧州各国で新型コロナウイルスの猛威が高齢者向けなどの介護施設を直撃している。重症化しやすい高齢者の死亡が相次ぐなか、対応が追いつかない状況だ。背景には隔離が難しいことなどの事情がある。
「出たこと隠したかったのでは」
パリ近郊に住むリシャール・ペルスボーさん(70)は、介護施設にいた母が新型コロナウイルスに感染して亡くなったと考えている。だが、施設側からの説明はない。
母ミレイユさん(93)が入居していたのはパリ南郊シャティヨンの施設。ミレイユさんが高熱を出して新型コロナウイルスの検査を受けたと介護職員から連絡があったのは3月20日。「必要があれば救急車を呼ぶ」と説明を受けた。
施設は外部の訪問を禁じていた。検査結果を尋ねようと3日後、施設に電話すると「わかっていれば連絡する」。その2日後、ミレイユさんは病院搬送もされず、施設で亡くなった。死亡確認をした医師からは、死因は不明と告げられた。感染していたのかも知らされないままだ。リシャールさんは「母が憤りを感じたまま旅立ったのではないかと思うとやりきれない」。
遺体は死亡当日、感染者同様厳重に密封され、ひつぎに納められていたという。それをリシャールさんが知ったのは4月1日。火葬の前日だった。母親の顔を見ることさえかなわず、遺灰だけが手元に残った。
リシャールさんは「施設は(…
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