巨大地震の「余韻」、被災地の地下深くで進む二つの現象

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桑原紀彦 小林舞子
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 東日本大震災から10年目の4月を迎えました。マグニチュード9・0の巨大地震の原因は、プレート境界の大きなずれ。その「余韻」ともいえる動きが、今なお地下深くで続いています。研究が進み、スケールの大きなメカニズムが見えてきました。

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震災で沈降、一転隆起へ

 津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市。牡鹿(おしか)半島先端の鮎川港では2017~18年、岸壁の高さを「かさ下げ」する異例の工事が行われた。

 この岸壁では、震災の翌年から、最大1・5メートル「かさ上げ」する県の復旧工事が実施されている。一帯の地盤が震災の直後に1メートルほど沈んだためだ。

 ところが、その後、地盤は隆起し始めた。岸壁も盛り上がり、「船からの荷揚げ作業や乗り降りに支障が出ている」と漁師らから苦情が寄せられた。県は今度は岸壁の上部を30センチ削る工事に着手。1億6千万円の費用がかかったという。

 被災地の地下で、何が起きているのか。

 国土地理院の観測によると、こうした現象が見られるのは石巻だけではない。東北地方の太平洋沿岸の広い範囲で、震災で大きく沈んだ地盤が、その後一転して隆起し続けている。石巻市寄磯浜では地震直後に107センチ沈降し、今年2月までに63センチ隆起した。岩手県大船渡市赤崎町は75センチ沈降して37センチ隆起、福島県楢葉町は51センチ沈降して24センチ隆起した。いずれも地震前の高さには戻っていない。

 震災後に大きく沈降した理由は、プレート境界のずれで説明できる。沈み込む太平洋プレートとくっついていた陸側のプレートが一気に跳ね返った。それに伴い、海底下の岩盤が沖合側に押し出され、沿岸部は逆に沈んだ形になった、とされる。

 では、その後なぜ隆起に転じたのか。

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■マントルが水あめのようにゆ…

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