仏の医療危機「苦渋の選択、迫られている」 日本人医師

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パリ=疋田多揚
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 新型コロナウイルスによる死者が1300人を超えるフランスで、患者殺到による医療危機を回避しようと、重症者の収容先を国内外で分散させる動きが強まっている。空軍機や高速鉄道(TGV)などを駆使し、満室の病床から、患者の少ない地域や近隣国の病院へ搬送している。

 26日朝、仏東部のストラスブール駅から、新型コロナウイルスの重症患者20人を乗せたTGVの特別列車が仏西部に向けて出発した。客車に担架が取り付けられ、2階建ての客車1両につき4人の患者を乗せ、医師や看護師が付き添った。

 仏東部は国内死者の3分の1以上が集中し、集中治療用の病床が患者であふれる病院が続出している。政府は仏軍に野戦病院を設営させたり、空軍機を使ったりして患者の国内分散を図ってきたが、感染拡大速度に追いつかず、この日初めてTGVを活用した。フランスを横断し、患者が比較的少ない700キロ離れた西部の病院へ搬送する。

 フランスは集中治療用の国内病床が7千床で、5千床のイタリアと同規模。ドイツの2万5千床と比べると少ない上、マスクなどの医療物資も不足している。AFP通信によると、5人の医師が感染して死亡している。21日にはドイツが仏東部の重症患者の引き受けを始めている。

 仏東部ミュルーズの野戦病院を訪れたマクロン大統領は25日夜、現地からのテレビ演説で「国全体で結束する」と語り、医療危機回避に向けてあらゆる手段を講じる考えを示した。

「当初はインフルに毛が生えた程度かと」

 新型コロナウイルスによる重症患者が殺到するフランスの医療現場で、救急外来の研修医として働く日本人医師がいる。限られた人工呼吸器をめぐって治療の制限をせざるを得ない状況が始まり、「苦渋の決断を迫られている」と朝日新聞の取材に語った。

 医師は折口達志さん(25)。7歳で渡仏し、今はフランスの大学の研修医として、パリ近郊の受け入れ拠点病院で連日、治療に当たっている。

 病院の集中治療用ベッド20…

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