第2回保険勧誘の深い「闇」 買うのは私、でも教えられぬ費用

有料記事ややこしい保険の研究

松田史朗
[PR]

ややこしい保険の研究②(全5回)

 大阪府の主婦、松尾保美さん(70)は2年前、夫が銀行から「外貨建て一時払い保険」に入るよう勧められる様子を横でつぶさに見ていた。夫は昨年他界し、円で換算すると実質1割も目減りした外貨が松尾さんの手元に残った。

 リスクや手数料についての銀行の説明が不十分だったことは、当時から気づいていた。だが、夫が契約してしまった以上、どうすることもできなかった。

 じつは松尾さんは、「消費者の目」で保険を長年見つめ続けてきた人物でもあるのだ。2015年まで22年間、府内で消費生活相談員を務めたという経歴の持ち主。さらに、相談員になるのとほぼ同時に、相談員仲間とともに「生損保研究会ぐるーぷ31」という団体をつくり、保険の調査・研究を27年間も続けてきた。その経験を買われ、大阪府金融広報委員会の「金融広報アドバイザー」も務める。

 松尾さんは相談員に就く直前の1993年、相談員の先輩の指導のもと、生命保険の販売実態を調べたことがある。そこで、保険の勧誘にはさまざまな問題があることに気づいた。

 そうした問題意識を相談員仲間と共有し、始まったのが「生損保研究会ぐるーぷ31」の活動だ。

「この保険を売るのは心苦しい」

 活動の初期、テーマの一つに挙がった保険に「生存給付金付保険」がある。生存していれば一定期間ごとに給付が受けられると、90年代後半に盛んに売られていた。

 この保険の調査を始めるきっかけになったのが、グループに寄せられた1本の電話だった。電話の主は、生保大手に勤める営業担当の社員。こう打ち明けた。

 「顧客に勧めるよう会社から強く言われているのですが、この保険は顧客が損をするしくみです。この保険を売るのは心苦しい」

ここから続き

 ぐるーぷ31のメンバーは…

この記事は有料記事です。残り1882文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら