大阪)「コリアタウンの歴史知って」 在日3世が自伝

有料記事

武田肇
[PR]

 コリアタウンとして知られる大阪市生野区の御幸通商店街で生まれ育ち、韓国食材の製造・販売会社を全国区にした在日3世の洪性翊(ホンソンイク)さん(63)が、半生をまとめた自伝を出版した。今や週末には多くの若者が韓国のグルメやコスメを求めて詰めかける商店街の「前段の歴史」を伝える。

 商店街は戦前に日本が朝鮮半島を統治した歴史を背景に、多くの在日コリアンが暮らす。洪さんが2代目社長を務めた徳山物産は済州島にルーツを持つ父・洪呂杓(ホンヨピョ)さん(2010年に80歳で死去)と母の康在順(カンジェスン)さん(84)が創業した徳山商店が前身。トック(もち)や冷麺の製造の機械化を先駆けた父の会社を1990年代後半に引き継ぎ、全国のスーパーに韓国食材コーナーが常設されるのに貢献した。

 旧知の編集者、川瀬俊治さん(72)に「人生の聞き手になってほしい」と自伝執筆の協力を求めたのは、経営を長男に譲って約1年半後の2018年、がんと診断されたことがきっかけだった。

 かつては猪飼野(いかいの)という地名で「貧困と差別の象徴と見られた」(洪さん)商店街は、数年前からK―POPグループのTWICEや防弾少年団(BTS)の人気がけん引した「第3次韓流ブーム」で、韓国で流行の化粧品や軽食を扱う店がぎっしり並び、若い女性らでにぎわう。地元NGOの調査によると、いま商店街には休日で約8千人が訪れ、その8割を10、20代を中心とした女性が占める。

 「アボジ(父)の夢だった在日と日本人が共生する街が実現したのはうれしい」としつつ、在日の血と涙の歩みが忘れられつつあるのではないかとの思いも膨らんだ。自慢話ではなく若い世代に歴史を伝える橋渡しをしたいと思った。

ここから続き

 自伝は「生まれる前に起きた…

この記事は有料記事です。残り408文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら