「おいしい」の数値化に挑む 新型センサーで細胞培養で

有料記事

川原千夏子
写真・図版
[PR]

 甘みやうまみ、一言に「おいしい」と言っても、人はどうやって味を感じているのか、その仕組みを解明し、味を数値化しようという取り組みが進んでいる。鍵を握るのが、食材の味をキャッチして細胞に信号を送る受容体の働きだ。

 こってりした肉料理とコクのある日本酒を合わせると「味わいが深まる」。逆にキレのある日本酒だと「味が締まる」。

 新潟県の菊水酒造は、自社の代表的な日本酒15品種の味を数値化し、4パターンに分類して相性のいい料理を紹介している。開催している料理教室でレシピを説明したり、ホームページで分類を示したり。取引先の飲食店でも「『この料理に合うお酒は?』と聞かれた時に参考になる」と好評だ。

 味を分析したのは、九州大がベンチャー企業などと産学連携でつくった「味香り戦略研究所」(東京)の分析機。甘味(かんみ)やうま味、苦味(くみ)、塩味(えんみ)、酸味の基本五味に、痛みの感覚である渋みを加えた味の評価はこれまで、人の舌に頼る場面が多かったが、脂質などをポリ塩化ビニルに混ぜた新開発の「味覚センサー」で、流れる電気の電位差から数値化できるようになった。

 島根県商工会連合会もこのセンサーを使って2017年、県の特産品58品を分析。ご当地のポン酢が大手の既存品に比べ、ユズの酸味が強く、塩味が控えめだということが分かった。県内外に売り込む際に特徴を説明しやすくなったという。

 ある食品メーカーが、数多くそろえていたドレッシングを分析したところ、実は味の方向性が偏っていたことが判明し、新商品の開発につながったこともある。果物や野菜の品種改良でも参考にされているといい、味香り戦略研究所の高橋貴洋・主任研究員は「音楽の楽譜ならぬ、食べ物の食譜をつくりたい」と意気込む。

■甘味受容体はおおらか…

この記事は有料記事です。残り1634文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません