感染者の移動歴、どこまで公表? 新型肺炎で割れる判断

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山本恭介 新田哲史 長富由希子 茶井祐輝
感染者の移動歴、どこまで公表? 新型肺炎で割れる判断
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 新型コロナウイルスに感染した患者の立ち寄り先を公表するかどうかをめぐって、国と地方自治体の対応に違いが出ている。厚労省は「感染防止に必要ない」との立場だが、大阪府は「情報がないと住民は不安になる」と主張。府は30日、一部行動歴を独自に公表した。

 「正確な情報をお伝えすることが皆さんの冷静な判断・行動につながっていく。不安を生まないため、適正な情報開示が必要だ」

 大阪府の吉村洋文知事は30日、記者団にこう強調して、新型コロナウイルスの感染が確認された大阪市内の40代の女性の行動歴を独自に公表。大阪市湾岸部の「ベイエリア」や「大阪城エリア」に滞在していたなどと明らかにした。

知事「公開しなさすぎ」 厚労省「流行、起きてない」 

 公表のあり方をめぐる違いは29日段階から表面化していた。吉村氏は記者会見で「あまりにも公開しなさすぎ」と厚労省を批判した。「情報は国民のものだ」と訴え、吉村氏自身が30日になって公表に踏み切った。

 一方の厚労省が行動歴の公表に否定的なのは、新型コロナウイルスは一緒に生活したり、長時間会話をしたりする濃厚接触者以外からも感染する「流行」が起きている状況ではないと判断しているためだ。担当者は「(感染防止のために)疫学的な対策のために知ってもらう必要がある情報か、患者の人権やプライバシーの問題で公表するのが適切な内容なのかがポイント」と強調する。

SARSでは大混乱、基準なく個別判断

 2002~03年に中国などで重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時には、台湾から旅行で来日した男性患者の詳しい訪問場所と日時を発表し、大混乱を招いた経緯もある。

 感染症法は国と都道府県に対し、感染症の情報について積極的な公表を求めているが、厚労省によると、最も危険性が高い1類以外は公表の基準がなく、2類に相当する新型コロナウイルスを含むそれ以外の感染症は個別に判断する運用となっている。

 厚労省は29日段階で大阪府の姿勢について「必ずしも厚労省に合わせる必要はない。(府の判断で)公表していただければ」としていた。(山本恭介、新田哲史)

専門家でも分かれる判断

 感染した患者の立ち寄り先をどこまで公表するべきなのか。専門家の間でも意見は分かれるが、正しい知識を持って冷静に対応する必要性は共通して主張している。

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