新たな聖地に、共生の場…国立競技場建設それぞれの思い

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橋田正城 南日慶子
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 東京五輪の開幕まで半年を切った。主会場になるのは、「杜(もり)のスタジアム」をコンセプトにつくられた新しい国立競技場だ。建設にかかわった人々は、どんな思いを込めたのか。(文中敬称略)

「苦杯」経て磨いた設計思想

 勝負事は勝ってなんぼだ。でも、「敗北」から学ぶこともある。

 新しい国立競技場の設計責任者を務めた大成建設の川野久雄(55)にとって、2008年北京五輪の主会場の国際コンペで落選したことが転機だった。

 1991年に入社して以来、主にスポーツ文化施設の設計に携わり、いくつもの大型案件にかかわった。03年には、札幌ドームの設計を一緒に手がけた建築家の原広司らと、北京五輪・パラリンピックの競技場案を提案した。

 「日本は技術立国。中国に先んじて国際的なスポーツイベントをいくつも開催してきた。その知見や技術力を結集した」

 屋根は開閉式で、つぼみから花が開くように最大約160度持ち上がる斬新なつくりにした。縦約30メートル、横約80メートルの巨大な画面も屋根に取りつけることにした。経済成長著しい中国にふさわしく、高揚感あふれる開幕式の演出を可能にする劇場型の計画だった。

 札幌ドームの設計を技術力で勝ち取ったという自負心もあり、満を持して臨んだ。だが選ばれたのは、欧州と中国の設計事務所が共同提案した「鳥の巣」のような計画だった。

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 「中国古来の陶器をモチーフ…

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