トヨタが初めてまとめた「バイブル」 社長が見せた怒り

有料記事トヨタ変革の時

六郷孝也
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 「強い危機感を共有し、もう一度、トヨタの強みを取り戻さなくてはいけません」

 トヨタ自動車はこの夏、初めて社員手帳を作った。その冒頭の一文だ。

 仕事の日程を書きこむ手帳ではない。企業理念と社員の行動のよりどころであるとする「豊田(とよだ)綱領」を現代語訳と解説付きで掲げ、「トヨタ生産方式」のエッセンスも並べた。全65ページのポケットサイズ。トヨタの強みを社員向けにまとめたバイブルともいえる。

 2019年の春闘の労使協議の席で豊田章男社長は労組に対し、「こんなに距離を感じたことはない」と不満をぶつけた。

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 その席では、豊田綱領に掲げられた5項目について時間をかけて自分の解釈を語ったうえで、「今回のやり取りのなかに『創業の精神』や、たたきこまれたはずの『作法』を感じ取ることができなかった」と、語気を強めた。

 「時代の変化を先取りして、自らの仕事のやり方を変えなければ」「議論のための議論とか、仕事をやっているふりや『ごっこ』はもうやめて、物事の本質を追求しよう」。厳しいことばを重ね、最後に「私たち全員が豊田綱領の精神を忘れかけていないか。創業の原点を見失った会社が大変革の時代を生き抜くことなどできない」と結んだ。

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 社員手帳は、この発言をきっ…

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