現代×前衛 不思議な「数」にまつわる美術で遊ぶ

有料記事

田中ゑれ奈
[PR]

 いつもそばにあって、ときに私たちを振りまわし、絶対かと思いきやそうでもない。そんな「数」にまつわる展覧会が、兵庫県の芦屋市立美術博物館で開かれている。4人の現代美術家がそれぞれ同館所蔵の前衛美術作品を選んで競演する、ユニークな試みだ。

 芦屋ゆかりの前衛美術集団「具体美術協会」で活動後、1970年代から「時間」をキーワードに制作してきた今井祝雄(のりお)(1946年生まれ)。79年5月30日に始まる「デイリーポートレイト」では1日1枚、インスタントカメラで自分の顔を撮り続けている。

 会期中も同館に毎日送られてくる今井の顔はさかのぼるほどに若がえり、見る者の個人史や社会の出来事と重ね合わされながら時を刻む。

 今井は自作のおともに、具体のメンバーだった田中敦子(1932~2005)と関根美夫(よしお)(1922~89)の絵画を指名した。

 田中の「’87H」は、電球の点滅が時の経過を象徴する田中自身の初期の代表作「電気服」から着想。そろばんがモチーフの関根の作品は今井の顔写真が繰られる映像の音と重なり、パチパチ勘定にいそしむようだ。

 同じく田中の絵画作品を含む久門剛史(ひさかどつよし)(1981年生まれ)のインスタレーションは、暗い空間に置かれた電球の光量がプログラム制御によって変化し、時折周囲を照らす。壁の時計は、秒針の先端についたルーペが時刻の代わりに極小サイズで記された円周率の数字をなぞるが、光が届く一瞬のチャンスを逃せば数字を読み取ることはできなくなる。

ここから続き

 津田道子(1980年生まれ…

この記事は有料記事です。残り655文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません