金融大混乱のリスクも 21年末に迫る金利指標の大改革

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寺西和男
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 世界の金融業界を揺るがしかねない火種が英国にある。

 欧州連合(EU)からの離脱(ブレクジット)ではない。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR〈ライボー〉)と呼ばれる金利指標が、2021年末にも公表停止となって使えなくなる見込みになっていることだ。ライボーは世界中の金融取引に使われているため、対応が遅れれば金融市場で混乱を招くおそれがあり、世界の金融機関は頭を悩ませている。

「準備しなければ、カオスに」

 10月に東京であったアジア証券業金融市場協会の年次総会。「しっかり準備しなければカオスになる。市場で大きな混乱が起きるだろう」(シンガポールのDBS銀行の担当者)などとライボーの公表停止をめぐる懸念が相次いだ。

 協会会長で米金融大手JPモルガン幹部のフィリポ・ゴーリ氏は「(ライボー問題を)協会でも優先事項として議論している。アジアの資本市場で大きな影響があるということがわかっているからだ」と危機感を隠さなかった。

 ライボーは、ロンドンの金融市場で主要銀行同士がお金を貸し借りする際の金利指標。ドル、ユーロ、円、英ポンドスイスフランの五つの通貨別に、ロンドンにある運営機関が毎日出しており、世界中の金融取引や金融商品の基準金利として使われている。

 世界の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)の傘下のグループが2014年3月にとりまとめた報告書によると、ライボーを使った金融取引(契約高ベースの推定額)はあわせて約218・5兆ドル(約2京4千兆円)以上と天文学的な規模になる。内訳はドル換算でみた場合、ドル建てが150兆ドルと最多で、次いで円建てと英ポンド建てがほぼ同じ30兆ドルと多い。スイスフラン建てが6・5兆ドル、ユーロ建てが2兆ドルだ。

日本の大手銀行も活用

 例えば、米国や英国では銀行が企業にお金を貸す場合、「ライボープラス○%」といった具合に、ライボーを基準金利にして融資相手のリスクなどに応じて金利を上乗せするケースが多い。日本の大手銀行でも、海外向け融資など国際的な取引にはライボーを基準金利に使うことが少なくない。企業が事業資金を集めるために発行する社債や金融派生商品デリバティブ)の金利にも広く使われている。

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