失語症の母、バタバタの子育て 愛情の形はイラストに

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伊藤繭莉
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 脳卒中や頭のけがなどで脳の一部が傷つき、言語を操ることが難しくなる「失語症」。厚生労働省がコミュニケーションを手助けする支援者の派遣事業を始めるなど、ようやくサポートの光が当たり始めた。

 8年前に倒れて失語症になった女性は、周囲の反対を押して出産。なかなか出てこない言葉に苦しみながら、大好きなイラストで子どもたちへの愛情を表現している。

 福岡県糸島市の重冨裕子(ひろこ)さん(40)は32歳のとき、脳卒中になった。病院で意識が戻ると、言葉が出てこなかった。「な、に、こ、れ」。相手が話すことが、暗号のように聞こえた。後遺症で重度の失語症になり、言葉を適切に話したり、聞いて理解したりすることが難しくなった。

 4年前に2人目の子を妊娠。だが、医師は「育児が難しいですよ」と出産に難色を示した。それでも重冨さんは産むことを決めた。もしものときに看護師らとコミュニケーションをとれるよう、病院側が体のしびれなどを指さして訴えるための絵を用意した。

 記者は重冨さんの自宅を訪ね、話を聴かせてもらった。長男が産まれたのは何年ですかと尋ねると、「えーっとですね」「違うかな」と考えながら、電子黒板に「2015年」と書いた。隣で見守っていた夫の倫一(ともかず)さん(47)から「違うよ」と指摘され、再び考えたが、わからなかった。「ごめんなさい」

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 普段は電子ボードや絵、ジェ…

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