巨大だがつつましい――。15日、関係者に全容が披露された新しい国立競技場から伝わるそうした印象は、建設までの経緯や時代の要請、設計を統括した建築家・隈研吾氏の設計手法とピタリと符合する。そして持ち味を、あえて強引にまとめるなら、「調停の建築」ということになるだろう。
この競技場は、一大イベントである五輪の主会場であることに加え、ザハ・ハディド氏らによる当初案が白紙撤回されたこともあって、極めて高い関心を持たれてきたといってよい。
しかし、競技場という建築形式は、美術館や学校に比べ、実はデザインの自由度が低い。トラックやグラウンドの形状、大きさはほぼ決まっているし、スタンドの形式も、動線や環境対応など考えるべき点はあるが、選択の幅は限られている。超高層や分散型の競技場は、ありえないだろう。2008年の北京五輪の際の通称「鳥の巣」は斬新な造形で知られるが、目に飛び込んでくるのはスタンドの外側と「おわんのふた」の部分といっていいだろう。
新しい国立競技場も、視覚的な…