ひたすら下見て歩く床活動 踏んづけられて輝く70年代

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山本奈朱香
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 普段は目を向けることの少ない床も、実は彩り豊かなデザインにあふれている。表面のツヤが美しいタイルや格調高いカーペット、ポップな柄のビニール系……。「床活動」と名付け、写真に撮って発信している人もいる。

 「床活動」歴4年のグラフィックデザイナー、今井晶子さん。待ち合わせの駅から、「何もかもがかわいくてパーフェクト」という東京都板橋区の喫茶店「ポケット」へ案内してくれた。ドアを開けると、チリンチリン、とかわいらしい鈴の音。黄色とオレンジ色の床が明るく、暖かみのある空間を作り出している。

 クッション性があり、プラスチック樹脂を原料とする「Pタイル」と呼ばれる床材。タイルに似せた造りで、「これだけ持ちが良いというのは、良いものを使われたんだと思います」と今井さん。鈍く光るツヤが、1977年の開店当時からの歴史を思わせる。1カ所、カウンター脇の床だけ、たくさん傷があった。「昔はウェートレスさんがピンヒールを履いて働いていたらしくて、あそこだけ傷んだらしいです」と教えてくれた。

 今井さんはもともと建物めぐりが好きだったが、よく使っていた駅の床が改装されたのを機に、床に目がいくようになった。しかも注目してみると、「いつも踏んづけられているから、きれいに残っているものはまれなんだ」と気がついた。いつしか、汚れや摩耗具合も含めた全体の雰囲気に魅了されていた。

 「床仲間」のフォトグラファーと編集者の3人で300以上の床を撮り、2年前に写真集「足の下のステキな床」(グラフィック社)にまとめた。北海道から九州まで、喫茶店や商店街のお肉屋さん、化粧品店など「採集」場所はいろいろだ。

 たまたま打ち合わせに行った…

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