いのちの電話、かけてもかけても話し中 足りない相談員

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井上裕一
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 悩みを聞いてほしくても、なかなか電話がつながらない――。自殺防止などに取り組む各地の電話相談で、こうした状況が常態化している。相談員がこの10年で約1千人減り、対応できる件数が減っているためだという。(井上裕一)

 神戸市の女性(29)は昨春、スマートフォンで「いのちの電話」に電話した。交際相手から「死んでしまえ」と怒鳴られ、自暴自棄になって自宅を飛び出していた。

 「誰かに話を聞いてもらいたかった」

 しかし、何回電話しても「ツーツーツー」と話し中の音が流れるだけ。ほかの相談電話も2カ所ほど調べ、それぞれ数回ずつ電話してみたが、どこも話し中でつながらなかった。「誰も助けてくれないのか……」。かえって、絶望感が募ったという。

 女性が電話をかけた先の一つが、大阪を拠点にする「関西いのちの電話」だ。事務局によると、1年間に受けている電話相談は約2万3千件。しかし実際にかかってきている電話は10倍以上とみられるという。

 電話は毎日24時間、ボランティアの相談員が受けている。1件あたりの会話の平均時間は40分ほど。2時間に及ぶこともあるうえ、相談員が足らずに4台の電話機をすべて稼働できないときもある。結果的に一部の電話しかとることができず、大半は話し中の状態だ。

 「何時間もかけ続けた」「いのちの電話まで私を見捨てるのか」

 そんな言葉をぶつけられることもあるという。

 こうした状況はどこも同じだ。

 悩みや孤独感を抱える人の話を聴く「いのちの電話」は、自殺防止のために1953年に英国で始まり、日本ではドイツ人宣教師が中心となって71年に東京で初めて設立された。その後、各地に活動が広がり、いまでは社会福祉法人NPO法人が全国で50のセンターをそれぞれ運営している。しかし時間帯にもよるが、横浜で電話がつながるのは10回に1回程度、愛知でつながるのは20回に1回ほどという。福岡でも最近、「10回電話してもつながらない」といった苦情が増えているという。

 ある相談電話の窓口では平日…

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