トランプ政権まるで「不在」 日韓対応遅れた二つの理由

有料記事日韓インタビュー「隣人」

聞き手・園田耕司 写真・ランハム裕子

日韓インタビュー ビクター・チャさん(元米NSCアジア部長)

 日韓対立激化の背景にあるのは、日米韓の安保体制の揺らぎなのか。米国の、日米韓安保体制の理論家はトランプ米大統領の同盟軽視の姿勢に強い警鐘を鳴らし、現実的な課題から日米韓が結束する必要を促す。

 ――日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が寸前で回避されました。

 「失効回避は歓迎すべきです。日韓の軍事情報が共有されなくなれば、両国間の安全保障政策が『デカップリング(分断)』され、北朝鮮、中国、ロシアが利益を得ることになります」

 「ただし、今回の失効回避は暫定的な措置で、協定を今後も維持するためには課題が多い。日本の輸出規制問題を解決するためには日韓の実務者協議が会合を重ねる必要があるでしょうし、元徴用工らへの賠償問題を解決するためには日韓の民間企業による協力も必要です。これらの解決に向け、時計の針がようやく回り始めたと言えます」

 ――日米韓安保体制は日米同盟と米韓同盟の双方から成り立ちます。日韓関係の悪化は、米国の国益に直結します。

 「米国はこれまで、日韓関係悪化を防ぐために陰ながら、重要な役割を果たしてきました。例えば、私がホワイトハウスで働いていた2006年4月、日本政府が竹島周辺に測量船を派遣しようとし、激しく反発した盧武鉉(ノムヒョン)政権が警備艇を派遣し、一触即発の事態となりました。両国間の衝突を望まなかった我々がそれぞれに『とにかくやめなさい』と伝えたところ、日本は測量船派遣を取りやめました。小さなことですが、こうした役割を米国は演じることができます」

 ――今回も米国が日韓に働きかけましたが、韓国がGSOMIA破棄の可能性に言及してからでした。

 「日韓関係が悪化する中、ト…

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