「家族のため」順調に見えた断酒生活 娘は包丁を握った

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矢田文
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 鳥取市の女性(48)は23年前、大阪からUターンした再就職先で、夫(46)と出会った。

 昼休みにもビールを飲む、お酒の好きな人。そんな印象が違和感に変わったのは、長男が3歳になり、双子の姉妹を妊娠したときだった。病室に見舞いにくると、買ってきたカップ酒をあけてベッドの横で飲んでいた。

 次第に仕事に行かなくなった。朝から晩まで酒浸りの日々がつづき、暴言をはき、子どもたちに手を出した。長男は小学2年で円形脱毛症になった。保育園に通う次女のお絵かき帳には、黒のクレヨンでぬりつぶされた真っ黒なかたまりが並んでいた。

 専門病院に2カ月入院し、断酒会に通うと、夫は酒を断つことができた。例会や研修旅行。同じような境遇の人や家族が体験を告白し、はげましあう活動が夫婦の支えになっていった。

 夫がこのまま酒に手を出しさえしなければ、家族は幸せ――。それが幻想だったと気づかされたのは2018年、断酒9年目を迎えた春だった。

 「お前さえいなければ」。中学2年になった次女が台所の包丁を持ちだし、夫に向かってそう叫んだ。学校に行くか行かないかで口論になった末、夫が次女を突き飛ばしたことがきっかけだった。

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 次女の目は本気だった。夫が…

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