皇位継承に伴う「大嘗祭(だいじょうさい)」のメイン儀式「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」が14日から15日にかけて行われる。大嘗祭への公費支出をめぐっては、宗教色が強く、憲法の政教分離原則に抵触するとの批判がある。これに対し、政府は「皇室の長い伝統を受け継いだ皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式」として、憲法上の問題はないとの立場だ。だが、そもそも長い伝統とは何なのだろう。歴史学者と考えた。
大嘗祭は7世紀後半、毎年行われる新嘗祭(にいなめさい)と区別し、天皇の即位に伴う一代一度の儀式として行われるようになったとされる。室町時代、応仁の乱が始まる前年の1466年、後土御門天皇即位に伴って実施されたが、それ以降、約220年間行われなかった。
復活したのは江戸時代の1687年、東山天皇の即位の際だった。当時の将軍・徳川綱吉が、朝廷再興を強く目指す霊元上皇の意向をくんだという。
高埜利彦・学習院大名誉教授(日本近世史)によると、それまでは幕府による朝廷の封じ込めの時代。天皇は京都にある禁裏(御所)から出て行幸することもなく、天皇を支え、朝廷を構成する公家たちも自由勝手な行動は許されなかった。それを、天皇や朝廷の権威を封じ込めるのではなく、朝廷儀礼などを復活させる方針に転換した。
高埜氏は「海外に目を向けると、明朝が滅んで清の時代を迎え、国内外に平和が訪れたことが背景の一つ」とみる。「武力によるのではなく、上下の身分や階層秩序を利用することで将軍権力を守る方向へ路線転換した。天皇や朝廷の権威がそれに利用された」
その後、大嘗祭は中御門天皇の即位時に中断したが、桜町天皇の即位から代替わりの度に実施されるようになる。「幕府側から積極的に働きかけて再開させたことが特徴」と高埜氏。「(徳川)吉宗政権の末期で、財政再建など様々な制度改革が行われた。天皇・朝廷の儀式も統治の基盤の一つとしてしっかりやるべきだとなり、大嘗祭の再復活もその一環だった」
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