「そんないいこと言った?」いつかの助言に緒方貞子さん

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編集委員・藤田直央
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 国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんが10月末、92歳で亡くなった。紛争や貧困の現場に身を投じて解決策を探り、国際社会に訴える姿は多くの後進に影響を与えてきた。「まな弟子」として親交の深かった国連大使の星野俊也さん(60)に、緒方さんとの思い出を聞いた。

「模擬国連」を熱心に応援

 出会いは1980年、星野さんが上智大外国語学部2年生の時。緒方さんは学者から日本人女性で初という国連公使に起用された任を終え、上智大に教授として着任していた。

 「颯爽(さっそう)と教壇に立たれ、とにかくかっこよかった。学識と実務に裏打ちされた『国際機構論』の授業では、国際的な制度が多国間の交渉と妥協のつばぜり合いで生まれ、変化するダイナミズムを学びました」

 緒方ゼミ1期生となり、仲間と「模擬国連」を始めた。各国の国連大使になりきってリアルな国際問題への対処を議論するもので、今では日米などの高校生や大学生の間で盛んに行われている。星野さんらによる草分け的な取り組みを、緒方さんは熱心に応援した。

 星野さんは上智大卒業後、国際政治学者の道へ進んだ。大阪大教授を経て、知見を生かし外交官として活躍している。「緒方先生を見習って国連を中心とした多国間外交の研究と実務の道へ進み、今日があります」と振り返る。

歓談の場で語られた女性たちへのエール

 星野さんは、緒方さんに結婚式に主賓として出席してもらってからは、妻とともに親交を深めてきた。夫妻はニューヨークに発つ前の2017年初夏、東京で緒方さんに食事に招かれた。妻の千華子さんが「好奇心を大切に、という先生の助言を大切にしています」と話すと、緒方さんは「あら、私そんないいこと言ったかしら」と笑った。

 緒方さんが話した「子育てが…

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