拡大する写真・図版ベネズエラ・マラカイボで2007年11月、演説するチャベス大統領=ロイター

 ベネズエラでは政権が反米国を唱える。中米の若者は豊かさを求め米国をめざす。ラテンアメリカの問題には必ず米国が顔を出す。この複雑な関係の歴史と現状について、2人の識者に尋ねた。(聞き手・岡田玄)

フェルナンド・エンリケ・カルドーゾさん(元ブラジル大統領)

拡大する写真・図版フェルナンド・カルドーゾ元ブラジル大統領=サンパウロ、岡田玄撮影

 ――同時期に「発見」された北米とラテンアメリカ。なぜこれほどの違いが生じたのでしょう。

 「ラテンアメリカの歴史をひとくくりにはできませんが、共通点はあります。スペインやポルトガルから、先住民をカトリックに改宗させるために人々が来たこと、宗主国の貴族など有力者にしか土地所有が認められなかったことです。富や生産物は本国に送られました」

 「北米の植民地化は英国での支配から逃れ、自由になるためでした。入植者には土地が分配されました。土地所有を通じ、富の蓄積が行われました。米国には資源だけでなく、消費する市場ができたのです。最も重要な違いです」

 ――「従属論」の古典として知られる、あなたの著書「ラテンアメリカにおける従属と発展」は、ラテンアメリカ発展の道筋を描いています。

 「私は従属論者と呼ばれるのを拒んできました。私の主張は、ラテンアメリカ諸国は輸出で得た富を国内消費に使うことで国内市場が発展してきたし、発展できるということでした。過去の例ではブラジルのコーヒー、アルゼンチンの牛肉などが挙げられます。つまりグローバリゼーションです。当時、その言葉はありませんでしたが」

〈従属論〉 途上国が低開発状態のまま発展できないのは、先進国に従属し、労働力や資源を収奪されてきたためと考える世界経済理論。ラテンアメリカ研究をもとに1960年代に唱えられた。社会主義革命の理論的根拠ともされた。後に新興工業国の発展をうまく説明できず説得力を失った。

 ――ベネズエラなど左派政権で…

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