台風19号は、東日本の広い範囲で堤防決壊が同時多発的に起こる「未曽有の事態」をもたらした。激しい水流は家屋を破壊し、人々の日常を奪った。堤防の限界と防災をめぐる課題も浮き彫りにした。
約9・5平方キロに及ぶ大きな浸水被害をもたらした長野市穂保の千曲川の堤防決壊現場。15日、原因究明のために国土交通省が立ち上げた堤防調査委員会のメンバーが現地調査に訪れた。委員長の大塚悟・長岡技術科学大教授(地盤工学)は調査後、「非常に流れが強かったことがわかった。越水で堤防が削られた可能性もある」と話した。
決壊したのは千曲川左岸の約70メートルの区間。堤防が残っている隣接部も、数十メートルにわたって堤防の外側が深くえぐられ、茶色い土がむき出しになっていた。
一般的に、堤防から水があふれると、流れ落ちた勢いで堤防の外側が浸食される。内側から水がしみこんで堤防が弱くなっているところに、外側からも崩れ、決壊に至る。千曲川では今回、水が堤防を越えて流れ出る様子が国交省のカメラに記録されていた。
決壊地点の下流約5キロでは川幅が急に狭くなり、上流約8キロでは犀川が合流する。一帯は古くから洪水の「常襲地帯」とされ、記録に残る最大規模の寛保2年(1742年)の洪水でも同じエリアが浸水した。川幅などが決壊に影響したかについては、委員会で調べ、対策を検討するという。
各地で決壊が相次いだのは…