「貧者の兵器」がサウジ施設攻撃、犯行主体は不明のまま

有料記事

宋光祐 リヤド=高野裕介 ワシントン=渡辺丘
[PR]

 サウジアラビアの石油施設が攻撃され、世界の原油市場を一時混乱に陥れた事件から28日で2週間になった。米国は「イラン犯行説」を強調するが、犯行主体は不明のままだ。攻撃に使われたとされるのが軍用無人機ドローン)。費用の安さから「貧者の兵器」と呼ばれるこのドローンが紛争の形を変えつつある。

 サウジの首都リヤドから約300キロ離れた東部アブカイク。国営石油会社「サウジアラムコ」の石油処理設備が集まる「心臓部」が18機のドローンで攻撃を受けたとされるのは14日未明だ。現場では、一直線に並んだ高さ数十メートルのタワー型の設備に攻撃を受けた黒こげの痕跡があった。いずれも北西方向からで、驚くほど正確に攻撃されていた。米ヘリテージ財団上級研究員のピーター・ブルックス元米国防次官補代理は、「精密誘導のために衛星からの信号を受ける装置などを搭載していた可能性がある」と指摘する。

 今回の攻撃をめぐり、サウジと敵対する隣国イエメンの反政府武装組織フーシが「10機のドローンで攻撃した」との声明を発表。だが、米国は攻撃を受けた方角などからイエメンではなく、イラン方向からの攻撃と主張。ただ、ドローンが使われたという点では一致している。

 英NGO「ドローン・ウォーズ・UK」が公表した昨年の報告書によると、ドローンは米国とイスラエルが2000年代初頭から10年以上、開発で独走してきた。それが今、中国やイランなどの国家のほか、フーシといった非国家勢力が「第2世代」として登場している。今回の攻撃で名指しされたイランは、12年に初めてミサイルを搭載できる軍用ドローンの存在が明らかになり、翌年には量産を開始。フーシなど複数の親イランの武装組織がイラン製ドローンを手にしたという。主力機種の翼長は5メートルほどとみられる。イランや中東問題に詳しい北海道大学の鈴木一人教授によると、イランの軍用ドローンは10年代に飛躍的に性能が向上。1千キロ以上離れたイエメンからの攻撃も、「最新のイラン製ドローンならば技術的に不可能ではない」と言う。また、鈴木教授は「イランが自国開発のモデルにしたのは米国の技術だ」と指摘。01年に始まったアフガン戦争で、イランは墜落した米国のドローンを回収して技術を採り入れたという。

 一方、精密攻撃のためには通信衛星が必要だが、イランは自前の衛星を持っていない。仮にイランやフーシの犯行ならば他国の衛星を使った可能性がある。今回の攻撃の起点は判明するのか。鈴木教授はドローンの機体に飛行経路のデータが保存されている可能性はあるとしつつ、「残骸を見る限りではデータを回収するのは難しそうだ」と指摘する。

 サウジが公表した残骸からイラン製兵器なのが濃厚で、英仏独も「イランに責任がある」と声明を出したが、直接関与は分からないままだ。

ここから続き

 ドローンにはパイロットはお…

この記事は有料記事です。残り749文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません