「これでダメなら」 外交主導、首相が選んだ特別な役人

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二階堂友紀 竹下由佳 相原亮
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 安倍晋三首相が、政府の外交や安全保障政策で中心的な役割を果たす国家安全保障局(NSS)の局長交代に踏み切った。13日付で外務省出身の谷内正太郎氏(75)の後任に警察庁出身で首相側近の北村滋氏(62)を起用。外交・安保政策を自らの意向を反映させやすい側近で進める構えで、官邸主導がさらに強まりそうだ。

首相「特別な役人」を起用

 「北村さんは特別な役人だ。外務省は気にくわないだろうけどね」。首相は北村氏の起用を決めた後、周囲にこう語った。

 初代局長を務めた谷内氏は、今回の内閣改造を機に「辞任したい。年齢的に難しい」と退任を申し出た。谷内氏は外務次官まで務めた外交官。外務省は後任にも同省出身者が就くと期待し、谷内氏本人も希望していたとされる。実際、外務次官や駐米大使を歴任した佐々江賢一郎氏、NSS次長で官房副長官補の兼原信克氏、現外務次官の秋葉剛男氏らの名前が取りざたされていた。ところが、外務省は外された。

 北村氏は1980年に警察庁に入り、2006年に発足した第1次安倍政権首相秘書官を務めた。民主党政権だった11年には内外の情報を収集・分析する内閣情報調査室(内調)のトップ、内閣情報官に就任。第2次安倍政権でも内閣情報官を続投し、安倍首相側近の一人に数えられる。

 内閣情報官としては米国や韓国、ロシアなどのカウンターパートと人脈を築いてきた。18年7月にはベトナム北朝鮮朝鮮労働党統一戦線部の金聖恵(キムソンヘ)統一戦略室長と極秘接触。日朝首脳会談の実現に向けた水面下の交渉も担ってきた。首相も周囲に「精度の高い情報を持ってきてくれる」と手腕を高く評価していた。

 外務省内では、インテリジェンス(情報収集・分析)の世界を長く歩んできた北村氏のNSS局長就任に不満が募る。谷内氏は中国共産党の外交トップら外国要人と関係を深めてきた。外務省関係者は「谷内氏のような付き合いはできないだろう」と言う。防衛省関係者も「NSSは谷内氏の下、外務、防衛官僚が結束していた。組織をどう回していくつもりか」と冷ややかだ。

■交代劇の背景に「ある人物」…

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