迫る水、崩れる屋根「もうだめだ」 60年前の夜に娘は

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 1959年9月26日午後7時30分ごろ。

 揖斐川の河口に近い三重県桑名市立田町の佐野正治(90)とみゆき(82)は、台風情報をラジオで聞きながら、1歳8カ月の娘かおりと3人で1階の茶の間で夕食を取っていた。

 突然、電気が消えて玄関のガラスが割れた。そこから水が流れ込んできた。暗闇なのに光って見えたので、すぐに塩水だとわかった。家のすぐ近くの堤防が切れたんだ――。

 「はよ2階に上がらないと」。正治は現金8万円と通帳と印鑑を懐にいれ、かおりを抱いて3人で2階に避難した。水はすぐに2階まで迫ってきた。

60年前に日本列島を襲った「伊勢湾台風」。全国で死者・行方不明者は5千人超。そのうち、愛知、三重、岐阜の東海3県だけで約4700人を占めました。あの夜、何が起きたのか。被災者の証言を元に再現します。五回シリーズの第二回です。

 「もうだめだ」と思った瞬間…

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