AIはマネできない? 神宮の皆勤賞DJ、原点は震災に

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榊原謙
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神宮球場物語⑤

 9月4日、明治神宮野球場であったヤクルト―広島戦。同点で迎えた九回裏ヤクルト2死満塁で、打席に3番の山田哲人選手が入った。2球目の153キロの直球をフルスイングではじき返すと、打球はカープファンで真っ赤に染まった左翼スタンドに弾んだ。球場全体に地鳴りのような歓声が広がった。

 さぁ、出番だ。

 「ナンバー200! ウォーク・オフ・グランドスラム!」

 マイクを握ったパトリック・ユウさん(51)のおなじみの太く伸びのある声が、球場全体に響き渡った。「200」は山田選手のプロ入り通算200本塁打、「ウォーク~」は「サヨナラ満塁本塁打」という意味だ。

 劇的な幕切れの後、いつものように右翼グラウンドに降りた。「9月4日、一生忘れられない日になりました。最後まで諦めず、勝利に導く声援、ありがとう!」。マイクを通して右翼スタンドを埋め尽くしたヤクルトファンに語りかけると、大歓声が返ってきた。

 パトリックさんは、マイクを使って野球場を盛り上げる「スタジアムDJ」だ。試合前やイニング間のトーク、英語を交えたプレーのアナウンス、好機の盛り上げ、イベントや注意事項の案内……。マイクで語るべきことは多い。

 その中でも最も工夫するのが、打席に入る選手の名前や愛称を叫ぶ「選手名コール」だ。ただ単に次の打者を知らせるだけではない。ファンに打者への期待を持たせ、一緒にコールしたくなるような「キャッチー」さが大切という。

年500以上の野球の試合が催される野球場があります。東京都新宿区にある明治神宮野球場。プロ球団の本拠地球場であり、アマチュア野球の「聖地」でもあります。90年以上の歴史を誇りますが、一方で、初めての建て替えの検討も始まっています。そんな日本を代表する野球場を、関わりの深い人たちのエピソードを通じて描きます。

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 例えば、主砲のウラディミー…

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