「ビール飲むとなぜトイレ」自ら実験台となったあの文豪

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江戸川夏樹
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 ビールがよりおいしい時期がやってきた。ただ、飲み過ぎるとトイレが……。そんな心配は、「舞姫」や「阿部一族」などの作品で知られる明治の文豪、森鷗外も同じだったようだ。ビールを愛し続けた鷗外の人生を紹介する「文学とビール」展が、東京都文京区立森鷗外記念館で開かれている。

 1884年、鷗外は22歳で陸軍軍医としてドイツに留学した。衝撃を受けたのは、500ミリリットルのジョッキで25杯をあおるドイツ人の飲みっぷりだった。滞在中の出来事をつづった『独逸日記』に「其量(そのりょう)驚く可(べ)し」と記した。鷗外は父親にも心配されるほどの酒豪だったが、それでも3杯が限度だったという。

 当時の日本は、西洋料理屋や牛鍋屋で瓶ビールが飲まれ始めたばかり。85年にジャパン・ブルワリー・カンパニー(後のキリンホールディングス)ができたが、ビールはまだ作っていなかった。記念館の岩佐春奈さんは「ジョッキで飲む生ビールはめずらしかった」という。

 ビールのとりこになった鷗外は、自らを実験台に「ビールの利尿作用について」と題したドイツ語の論文を書いた。ほかには食事や飲み物を一切とらず、一日10回、ビール、ワイン、水を飲むという実験もあった。鷗外のほか、後に宮内省(現・宮内庁)の侍医となった留学生・加藤照麿やドイツ人の大学職員らが被験者となった。その結果、アルコールに利尿作用があることが判明。学会で発表すると大喝采を浴びた。

 誕生日には「ワインとビールは人に勇気と力を与えてくれる! だから飲もう!」と書かれたビールジョッキを贈られ、鷗外は晩年まで大事に保管していた。帰国後も、来客をビールでもてなすなどビールを愛し続けた。

 同展はビール通だった鷗外の…

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