トリカブト殺人、愛人の自白から動く 刑事に届いた手紙

有料記事

釆沢嘉高
[PR]

 20年前の夏、埼玉県本庄市を舞台とした「疑惑」がメディアで報道された。本庄保険金殺人事件。金融業者の男=2008年に死刑が確定=が1995年と98~99年にホステスだった愛人らと共謀し多額の保険金をかけた男性2人を薬毒物で殺害、ほかの男性1人も殺害しようとした。男は「有料記者会見」を開き、事件は「トリカブト殺人」の名でも語られていく。捜査に当たった埼玉県警元刑事・貫田晋次郎(66)がいま、当時を語る。

前代未聞の「有料会見」

 99年7月、メディアが、その疑惑を一斉に報じる。

 99年5月に多額の生命保険をかけられた元パチンコ店員の男性(当時61)が急死し、別の元塗装工の男性(当時38)も不審な症状で入院。県警が保険金目当ての殺人・同未遂事件とみて捜査している、との内容だった。

 容疑者に浮上したのが、保険をかけていた本庄市の金融業者の男。その愛人らが元パチンコ店員、元塗装工と偽装結婚し、保険金の受取人になっていた。

 連日押しかけるメディアに、金融業者が「あらぬ疑いだ」と無実を主張する前代未聞の「有料記者会見」を開いていたことでも世間の注目を集めた。

思わぬヒントに遭遇

 46歳になっていた貫田晋次郎は、同年秋ごろ、捜査班に加わった。

 すでに捜査班は、保険金をかけていた金融業者が大量の風邪薬を購入していたことを確認していた。元塗装工は警察に「週に数回『栄養剤』と言われて手のひらいっぱいの薬を手渡され、飲むよう促された」と話し、嘔吐(おうと)物から風邪薬のある成分が検出された。

 捜査班は、金融業者が大量の風邪薬によって殺害をもくろんだとみていた。

 だが、元パチンコ店員の死因は司法解剖で「化膿(かのう)性胸膜炎・肺炎」と判明。因果関係がつかめず、手探り状態の貫田が、元塗装工の血液データを持ち込んだのは国立循環器病研究センター(大阪)。男性検査技師が「白血球の好中球が減っていますね。そちらを調べたら?」とヒントをくれた。

 「コウチュウキュウ?」

 初めて聞く言葉に首をかしげ…

この記事は有料記事です。残り2023文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら