冷凍マグロの解凍 魚河岸式「温塩水」でおいしく鮮やか

ごはんラボ

編集委員・長沢美津子
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ごはんラボ マグロの解凍

 刺し身やすしで親しんでいるマグロですが、自分で「さく」を買うとなると扱い方を案外知りません。通販などで手に入る冷凍マグロのおいしい食べ方を、夏のごちそう編として2回、東京・豊洲市場のプロに教わります。素材は本マグロより手頃なメバチ。旬に冷凍しトロも赤身も魅力十分です。

 解凍法が味を左右します。目指すのは、うまみ成分がドリップ(水分)として流れ出ないこと。スピーディーに解凍し、解けきった時の中心温度が低い方がドリップを抑えられます。実現させるのが、魚河岸式のぬるい塩水を使う「温塩水解凍」です。さくごとドボンと漬けるのには驚きますが、水は空気より熱伝導がよく、海水に近い塩水はマグロの身質を保ち、赤の発色も鮮やかになります。

 仕上げは表面の水分をしっかり拭き取って冷やすこと。身が締まってますますうまみを感じます。夕食に使うなら、昼食の片付けついでに解凍しておく。後は切るだけです。(編集委員・長沢美津子

写真・図版

監修・料理:栗原 豊

調理科学 :香西みどり

【材料】

□ 冷凍マグロ 1さく(200~300g程度)

□ 塩

□ 水

【道具】

□ ボウル

□ ペーパータオル

□ バット

□ ラップかポリ袋

【作り方】

ここから続き

①ボウルに水を入れ、1リットルに対し大さじ2の塩を入れ、3%濃度の食塩水を作る。夏なら水道水そのまま、冬は水温が低いので湯を足し、温かみを感じる25℃程度に調節する。

②凍ったマグロのさくをさっと水洗い。表面に切りくずがついていれば落とす。

③ボウルの塩水に漬ける。5~10分ほどおいて、さく全体がしなる8割程度まで解けたら引きあげる。さくの状態によって時間は加減する。途中で塩水が冷たくなったら新しい塩水に取り換えるといい。

④表面にさっと水をかけて塩分を落としたら、ペーパータオルで水分をしっかり拭き取る。新たなペーパーに全体を包む。バットに入れてラップをかけるか、保存用のポリ袋に入れて冷蔵庫に入れる。

⑤1時間以上冷やす。途中で包んだペーパーがびっしょりぬれたら取り換える。

【アレンジ】

◆マグロのグリル

 脂はのっているけれど、白い筋が太くてかみ切れない。そんな部位は弱火で焼いて中まで火を通すのがおすすめ。筋に透明感が出てぷるんとした食感になる。

 さくを厚さ1cmほどに切り、塩少々を振ってからフライパンやグリルで両面を弱火で焼く。刻んだネギとポン酢をかける。照り焼きなら、しょうゆ、酒、みりんを同割で混ぜたものに切ったマグロを漬けておき、汁気を軽く拭いてから弱火で両面を焼く。

CooKery Science

 ドリップは魚を冷凍した時にできた氷結晶が解凍で外に流れ出たもので、量は5%以下が良い解凍法とされる。実験では温塩水と冷蔵での解凍ともこの範囲内だが、温塩水がより抑えられた。見て味わって比べる官能評価でも、温塩水の方が黒色が弱く、身が締まり、弾力があった。

冷凍で買っても3日以内に

 今回の監修は、豊洲市場のマグロ専門の仲卸の団体「大物業会(おおものぎょうかい)」の横田繁夫会長(写真右)と栗原豊副会長(同左)。撮影は卸売会社・中央魚類の試作室を借りました。

 高級なクロマグロに話題は集まりますが、「毎朝のせりに並ぶマグロで最も本数が多いのが冷凍のメバチです」と横田さん。解体のための電動のこぎりの音が響きます。

 栗原さんは「冷凍マグロを買ったら、できれば3日以内、一番おいしいうちに解凍して食べてほしい」。業務用冷凍庫の-60℃に対して家庭用は-20℃程度。同じ冷凍でも40℃の差があり、時間が経つと氷の結晶が大きくなるなど解凍後の質が変わります。

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