香港「一国二制度」の危機 中国が必死に守りたいものは

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聞き手・佐藤達弥
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 英国から中国に返還されて22年が過ぎた香港。刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案への市民の反発は、デモ隊が立法会(議会)を一時占拠する事態になりました。中国政府が返還から50年間は守ると約束した「一国二制度」の形骸化が急速に進行しつつある――。香港にある日本総領事館の専門調査員などを務め、香港と中国の関係に詳しい亜細亜大学の遊川(ゆかわ)和郎・アジア研究所長はこう警鐘を鳴らします。詳しい理由を聞きました。

     ◇

 ――一国二制度とはどんな制度ですか。

 香港の領域の大部分はもともと、条約に基づいて英国が清(今の中国)から租借して統治した土地で、1898年から99年間借りることになっていました。その間、香港は英国の統治の下、世界的な貿易港、アジアの金融センターとして発展しました。租借期限が近づいてくると、国際社会では不安が募りました。「自由経済の香港が社会主義の中国に返還されたら、香港がこのまま繁栄し続けることは不可能ではないか」という不安です。

 英国との協議で、当時の中国の最高指導者だった鄧小平氏が提起したのが「一国二制度」です。互いの経済や社会制度を維持したまま、ひとつの国になるという意味です。もともとは、台湾を統一に向けた交渉のテーブルにつかせるための方策として考えたものです。鄧小平は、自らの大きな政治的レガシー(遺産)として香港返還を無事成し遂げたかった。香港を社会主義の中国に返還することを心配する英国や国際社会を納得させるため、一国二制度を持ち出したのです。

 ――具体的にどんな仕組みなんですか。

 英国と中国は84年、返還交…

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