遺棄事件「受給者怖くて従った」 ケースワーカーの苦悩

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川村貴大
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 京都府向日(むこう)市のアパートで女性の遺体を遺棄したとして、生活保護世帯の窓口だった同市職員と受給者の男ら3人が逮捕された事件で、京都地検は2日、3人を死体遺棄罪で起訴した。

 府警は同日、女性が大阪市住吉区の無職の小林美雪さん(当時43)と判明したと発表した。府警によると、アパートに住む受給者の橋本貴彦容疑者(55)の交際相手で、アパートで一緒に暮らしていた。

 起訴されたのは、橋本容疑者のほか、向日市地域福祉課主査の余根田渉(よねだわたる)容疑者(29)=京都市西京区=と無職の図越(ずごし)幸夫容疑者(52)=同市右京区

 起訴状によると、図越容疑者をのぞく2人は6月1日に橋本容疑者の1階の部屋で小林さんの遺体に圧縮袋をかぶせた。3人は同4日に大型冷凍庫に遺体を入れて、翌日に余根田容疑者が借りた2階の部屋に冷凍庫ごと移した。同11日には遺体を運び出し、駐車場に置いたとされる。

 小林さんは5月下旬から連絡が取れなくなっていて、DNA型鑑定で身元を特定した。全身に殴られたような痕があったが、死因は特定できなかった。捜査関係者によると、橋本容疑者は「殴ったら死んでしまった」と供述しているといい、府警は死亡した経緯について調べを続けている。

 余根田容疑者はケースワーカーで、昨年1月から橋本容疑者の担当だった。捜査関係者によると、「(橋本容疑者から)『元暴力団組員で傷害致死の前科がある』と聞かされ、怖くて従った」と説明しているという。

 「ケース記録」と呼ばれる日誌には、橋本容疑者から何度も乱暴な言葉を浴びせられたこと、「生活保護費が少ない」と苦情を言われたこと、職場に頻繁に電話があり、通話が2時間を超えることもあったことなどが記録されていた。

 市は、橋本容疑者について「処遇困難ケース」と認定し、月1回の家庭訪問の際は2人態勢で行くことを原則にした。ただ、余根田容疑者に同行する同僚はそのつど違った。

 余根田容疑者は、次第に買い物を代行させられたり、自身の車を使われたりした。事件当時、疲れた様子だったが、悩みを打ち明けることはなく、市はこうした「支配関係」を把握していなかったという。

 遺体が駐車場に置かれた6月11日の午前9時すぎ、余根田容疑者は「橋本さんのところに行ってくる」と職場で告げ、市役所から自転車で出かけた。上司や同僚は1人で行くので軽い用事かと思ったという。

 ある上司は「職場で問題を共有できていると思っていたが、担当者1人が悩みを抱え込んでいた。もっと密に情報共有し、組織全体で対応していればよかった」と悔やんだ。

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■受給者からののしられること…

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