子への大胆投資…でも保育現場はひずみ 新3本の矢って

有料記事

伊藤舞虹 浜田知宏 有近隆史 山本恭介
[PR]

 経済成長で得た税収などで子育て・介護支援を強化し、「1億総活躍社会」を実現する――。そんな旗を掲げ、アベノミクスは2015年から「第2ステージ」に入った。少子高齢化に伴う現役世代の急減を前に、社会保障や経済活動の支え手を増やす狙いもあったが、必ずしも現場が抱える課題の改善にはつながっていない。

 「小手先の対応では、もはや歯が立たない。子どもたちに大胆に投資することで、少子高齢化に立ち向かっていく」

 安倍晋三首相は先月30日、経団連の定時総会で、10月から始まる幼児教育・保育の無償化をアピールした。続いて参院選に言及。「夏の決戦は負けるわけにはいかない。政治の安定なくして経済の安定、社会保障改革、強い外交もない」と訴えた。

 首相は、自民党総裁選無投票再選を決めた15年9月、「アベノミクスは第2ステージへ移る。1億総活躍社会を目指す」として、「新3本の矢」を掲げた。強い経済や子育て支援、安心の社会保障をキーワードに、「国内総生産(GDP)600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」を目指すとした。

 そのうち、子どもがほしい国民の希望がかなった場合の出生率「希望出生率1・8」は、「待機児童ゼロ」など子育てしやすい環境づくりで実現を図るとした。保育の受け皿は、第2次安倍政権の発足以降、計画を上回るペースで50万人分以上増やしてきた。昨年4月1日時点の待機児童は4年ぶりに減り、10年ぶりに2万人を下回った。

 一方、首相が17年9月に衆院解散・総選挙に踏みきる際、消費増税の増収分の使い道を変えて実現すると打ち出したのが、全ての3~5歳児と低所得世帯の0~2歳児を対象にした幼保無償化だ。

 年7千億円超の財源が必要だったが、政策の優先順位の妥当性をはじめ、対象範囲や財源負担のあり方など具体的な制度設計を自治体側や関係省庁と議論することはなかった。保育を希望する人が増え、待機児童や現場の負担が増すとの懸念も招いた。先月10日の参院本会議で、立憲民主党の牧山弘恵氏は「保育士や幼稚園教諭のなり手不足で、現場は疲弊している。幼児教育・保育を受けられない子どもがたくさん生じることになりかねない。無償化は選挙向けに打ち上げられた目先のバラマキだ」と批判した。

 実際、現場のひずみは解消さ…

この記事は有料記事です。残り1604文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません