星おちて 海が宇宙を 産み直し(小原篤のアニマゲ丼)

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 7日から公開が始まったアニメ映画「海獣の子供」は、大変な作品です。大変なスケール、大変な密度、大変な映像美、大変な陶酔感、そして大変な難解さ。根本はとてもシンプルな物語なので、「なぜ難解なのか?」は割と説明しやすいと思います。やってみましょう。例によってネタバレありです(でも鑑賞の妨げにはならないんじゃないかな……)。

 その根本とはズバリ「宇宙の産み直し」。地球が女体であり、海が子宮で、そこに隕石(いんせき)という精子が落ち、全ての生命と宇宙全体が生まれ変わる。これは開闢(かいびゃく)以来、定期的に繰り返されているらしく――神道の言葉で言えば「弥栄(いやさか)」と「常若(とこわか)」ですな――劇中でそれは「祭り」とか「誕生祭」とか「本番」と呼ばれていて、「産み直し」が行われるポイントに向かってあらゆる海の生物がお祝いに集まり、ドーン!と海上から発した光が無限の彼方(かなた)へ広がっていき、生命も宇宙もリフレッシュ。これが「海獣の子供」で起こること。そう受け止めました。

 原子、細胞核、ミジンコ、ジンベイザメの斑点、ビッグバン、そして大星雲が、海の中(光の柱の中?)で一つとなり、目まぐるしく転変し、無数に増殖し拡散していく大クライマックス! イメージの奔流に溺れ、スクリーンを埋め尽くす海の生き物たちの躍動に目がくらみます。何も考えず壮麗な生命賛歌と神秘体験に酔えばいいのですが、やっぱりドラマがないと商業映画にならない(監督がテレンス・マリックさんなら隕石ドン!鯨たち大騒ぎ!宇宙バーン!だけで押し切っちゃうかもしれませんが)というワケで、それぞれ役割を振られたキャラクターたちが用意されています。

 これは五十嵐大介さんの原作…

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