名物の「黒いそば」復活 北海道で一番小さな村の駅そば

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本田大次郎
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 1日の乗客数28人の小さな駅に、8カ月ぶりに駅そばが復活した。北海道音威子府村にあるJR音威子府駅。老夫婦が店を守ってきたが、昨夏、おばあさんが足を骨折、休業していた。再開を待ち望むファンの声に支えられ、25日、2人は再び、元気に店に立った。

 店の名は「常盤軒」。店主の西野守さん(83)と妻の寿美子さん(78)が切り盛りする。戦前から続く店で、守さんは3代目。以前は駅のホームにあったが、1989(平成元)年、天北線が廃止されて宗谷線だけになると、駅舎内に店を移した。

 甘皮ごとひいた黒いそば「音威子府そば」を使い、昆布と煮干しを使っただし汁でそばの風味を引き立てる。鉄道ファンやそばファンの間で根強い人気がある店だ。駅は、人口700人弱の「北海道で一番小さな村」にあり、1日の平均乗客数は28人(2017年)に過ぎない。しかし、常盤軒のそばを目当てに、車で来たり、鉄道に乗って来たりする人が絶えず、休日には200食近く、そばが出ることもある。

 昨年8月、寿美子さんが自宅内で転び、足を骨折した。3カ月の入院、そして自宅に戻ってからは守さんと一緒に散歩をしながらリハビリに努めた。その間、店のシャッターは降り、「臨時休業」の紙が貼られた。自宅は駅のそば。守さんは「家から見ていると、車で駅まで来て、駅舎に入ってすぐに出ていく人をよく見かけた。うちのお客さんたち。申し訳なかった」。寿美子さんの足もなんとか回復し、営業再開を決めた。

 この間、駅舎に置かれたノートには「最近やってないけど、心配」「常盤軒のそばを食べに大阪から2度目の訪問でしたが、休業で残念」「食べられずショック。元気で復活して下さい」などのメッセージが、次々に書き込まれた。

 営業再開初日の25日は、お客さん5人が午前10時半の開店を待っていた。シャッターを上げると、守さんはまず、町内に住む常連の簑嶋哲夫さん(77)に声を掛けた。「試食だ。食べてみて」「味はどう。しょっぱくないか」と不安そう。簑嶋さんから「うまいよ」と声を掛けられるとホッとした表情で、お客さんの注文に次々応えていった。

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 「カンはまだ完全に戻ってい…

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