発達障害児の親たち、SNS交流は「炎上」から始まった

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田渕紫織
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 発達障害の息子の育児に思い詰めたある母親が、同じように葛藤する親たちをSNSでつないだ。「炎上」も経験したが、今や8千人超が参加する。自らの「暗黒時代」も含めた皆の経験値を束ね、渦中でもがく人に手渡そうとする試みだ。

 静岡県御殿場市の加藤照美さん(41)は、文具や雑貨の店を営む。10年前、3歳だった息子は、保育園から帰ると2時間以上泣き続け、原因がわからない。相談した行政の臨床心理士に「私、このままでは虐待します」と泣きつくと、「この子には何の異常もありません。愛情不足です」と言われた。

 それからアスペルガー症候群注意欠陥・多動性障害ADHD)の診断がつくまでの5年間は「暗黒時代でした」。覚えているのは、アニメ「きかんしゃトーマス」の絵を描こうとしてはうまく描けずに烈火のごとく怒り、泣きながら再び描いては泣き崩れ、また怒る姿。息子はあらゆることで毎日キレる。「私も人間なので腹は立つ」。怒声を上げてしまったこともあった。

 しかし、カウンセラーや臨床心理士、医師にアドバイスされるのは、「それができたら苦労しない」と思うことばかり。「かんしゃくを起こしている時は優しく抱きしめてあげて」と言われても、「当時は息子という存在が怖くて見ることも触れることもできず、毎日泣いていました」。

 診断がついて、夫も真剣にとらえて子育てに関わるようになり、困難から抜けつつあった5年前。地元の友人から「実はうちの子も『発達』で……」と相談を受けるようになった。ならばとフェイスブック(FB)のグループを立ち上げると、全国に輪が広がっていった。一対一で話を聞き合う時間も持とうと、地元で親どうしが交流するお茶会も始めた。

 専門家を招いた講演も企画する一方、FBのグループでは、アドバイスや議論をする場所ではない、とメンバーに前もって告げ、平らな関係を築く。自身が診察やカウンセリングで何かを助言されるたびに「今この瞬間が限界で、つらさをただ聞いてほしいだけなのに」と打ちのめされた経験からだ。

 最初の半年は「炎上」も経験した。「追い詰められている親どうしで、言葉のつかみあいのようなけんかが起きた」。

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