やなせ先生どうしましょう 新駅構想、高知の鉄道の悩み
高知県東部を走る土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の全20の駅には、「アンパンマン」で知られる高知出身の漫画家やなせたかしさんが描いたオリジナルのキャラクターがある。そんな「ごな線」に、開業以来初の新駅設置が決まった。だが、やなせさんは2013年に他界。新駅のキャラはどうなるのか?
ごな線は、JR土讃線と接続する後免駅と奈半利駅を結ぶ42・7キロのローカル線。旧国鉄新線として1965年に着工されたが、財政悪化で一時建設中止に。その後、第三セクターとして2002年7月、37年の歳月をかけて開通した。
やなせさんが描いたキャラは、いずれも駅や周辺名所、特産品などにちなんだもの。プロ野球阪神が春秋にキャンプを張る安芸市営球場そばの球場前駅は「球場ボール君」、四国八十八カ所霊場・神峯寺(こうのみねじ)最寄りの唐浜(とうのはま)駅は「とうのはまへんろ君」といった具合だ。
全駅にオリジナルキャラ
キャラは、開通に際して沿線有志が依頼。やなせさんの東京の自宅を訪れた安芸市の会社社長小松計夫さん(61)によると、1点の制作を申し出たところ、やなせさんは「20駅あるなら20体いるだろう」と、全駅分の原案を描いてくれた。
沿線首長らに案を諮ったところ、3駅について「ややイメージが異なる」という声が出た。やなせさんはすぐに対応。あかおか駅は「どろめ(生シラス)」が「絵金(幕末の絵師)」に、安田駅は「ホタル」が「アユ」に、田野駅は「スギ」が「維新の二十三士」に、それぞれ生まれ変わった。
「オリジナルソングも必要だろう」と、やなせさんは「走れ!漫画列車」など5曲を自ら作詞・作曲。コンサートを企画し、キャラの着ぐるみと一緒にステージにも立った。
新駅設置、「やなせ先生がご存命なら」
開通以来、駅数は変わらなかったが、中核駅・安芸と球場前の間に新駅「あき総合病院前(仮称)」の設置が今月5日、正式に決まった。沿線などの市町村と県でつくる「ごめん・なはり線活性化協議会」は21年3月の開業を目指して事業を進めるが、駅のキャラについては「まだ何も話し合っていない」(松田秀樹事務局長)という。
土佐くろしお鉄道安芸事務所長の鈴木勝也さん(56)は「やなせ先生がご存命なら快く描いて下さったでしょう」と天を仰ぐ。同社総務部長でファンクラブ「ごめん・なはり線友の会」会長の沢近昌彦さん(63)も「やなせさん関係で頼むのか、公募も含め地元の作家に考えてもらうのか……」と思案中だ。
■未発表作品は…