TVがつくる笑顔のファシズム ムーア監督のトランプ論

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聞き手・構成 ニューヨーク支局長・鵜飼啓
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 激しい戦いが繰り広げられた米中間選挙。各地を遊説したトランプ米大統領は野党候補やメディアをののしることで支持を訴え、米国社会の分断は深まるばかりに見える。なぜこんな事態に陥ったのか。リベラルな立場から鋭く問うドキュメンタリー映画「華氏119」(公開中)を撮ったマイケル・ムーア監督に聞いた。

 ――「華氏119」では、ヒトラーの演説映像にトランプ大統領の声をかぶせるなど、ナチスドイツと今の米国を比べる場面があります。米国は、かつてドイツがたどったような道を歩んでいるのでしょうか。

 「そうではありません。ヒトラーの口からトランプ氏の声が出てくるのは、面白いと思ったんです。ご存じの通り私は皮肉屋なので、ユーモアを政治的な武器として使っています」

 「私が言いたいのはこういうことです。1930年代のドイツや日本、米国はかなり開化した国でした。賢明で文化的な人がたくさんいました。当時の映画を見るだけでも、それは分かります。善意を持った良き人たちにファシズムが根付いてしまうことに、ずっと舌を巻いていました」

 「それはまた起こりうるのです。以前のようなファシズムではないでしょう。『笑顔のファシズム』(バートラム・グロス著)という本を読みました。書かれているのは、21世紀のファシズムは強制収容所やかぎ十字がもたらすのではなく、テレビ番組に出てくる笑顔が作り出すのだ、ということでした。テレビのプロパガンダやメディアの人間が取り上げることで、人々は取り込まれるのです。トランプ氏のもとで起きているのはそういうことです」

 「(2016年の大統領選で…

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