標高0mから北アルプス北端へ 手弁当で拓いた登山道

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文・畑川剛毅 写真・伊藤進之介
【スライドショー】朝日小屋管理人・清水ゆかりさんが語る栂海新道、朝日岳の魅力=伊藤進之介撮影
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 断崖に日本海の荒波が打ち寄せる天嶮(てんけん)・親不知(新潟県糸魚川市)。ここから北アルプス北端の朝日岳(2418メートル)に至る登山道がある。全長25キロの栂海(つがみ)新道だ。アルプスの高峰と標高0メートルが直接つながる登山道はほかにない。

 ○○新道と名づけられた登山道は、燕岳と大天井岳を結ぶ喜作新道しかり、前穂高岳と上高地を結ぶ重太郎新道しかり、山小屋の主(あるじ)が営業用に造った道が大半だ。栂海新道は違う。「ここに道をつくりたい」と念じたサラリーマンとその仲間が無報酬、手弁当で拓(ひら)き、維持している、日本でただ一つの登山道だ。

 新道開削の中心は、電気化学工業(現・デンカ)の技術者だった小野健さん(2014年、81歳で死去)。爆薬で石灰石を採る「発破屋」だ。

 早稲田大学を出て、1956年に入社、青海(おうみ)町(現・糸魚川市)の工場に赴任した。職場は全山が石灰石からなる黒姫山。配属直後、山頂から、犬ケ岳、白鳥山、親不知へと連なる、真っ白に雪をかぶった稜線(りょうせん)を眺め、胸を震わせた。「いつか、アルプスと海をつなぐあの稜線に道をつける」

 夢は公言しなかった。密生す…

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