小尻記者が報じた指紋強制具の絵、30年ぶり当事者に

有料記事

宮武努

 1987年5月3日の朝日新聞阪神支局襲撃事件で殺害された小尻知博記者(当時29)が生前、在日コリアンに対する警察の指紋強制採取の問題点を報じるため、当事者の男性に描いてもらったイラストの写しが5月3日、約30年ぶりに弁護士からその男性の元へと届けられた。

 描いたのは兵庫県尼崎市で喫茶店を営む金成日(キムソンイル)さん(65)。外国人登録法(現在は廃止)に基づく指紋押捺(おうなつ)が在日外国人に義務付けられていた80年代、制度に抗議して押捺を拒む運動を続けていた。金さんは86年11月、同法違反容疑で逮捕され、尼崎北署で数人の警察官に体を押さえられ、強制具に腕や指を固定されて指紋を採取された。

 釈放後、顔見知りの小尻記者から取材を受け、強制具のイラストを描いて採取の様子を説明。その内容はイラスト付きで同月に朝日新聞に掲載され、人権問題として注目を集めた。

 小尻記者が襲撃事件で命を落としたのは、その約半年後だった。

 事件から30年になった今月3日、金さんらが阪神尼崎駅前で小尻記者の追悼行事を催した際、市内に事務所を構える旧知の原田紀敏弁護士(73)から「これはあなたが持っていた方がいい」と、会場で1枚のファクス用紙を手渡された。

 用紙には、かつて自分が描い…

この記事は有料記事です。残り376文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません