(ナガサキノート)笑顔の奥に惨事の傷痕 体にも心にも

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岡田将平・35歳

近藤寿美子さん(1930年生まれ)

 近藤寿美子(こんどうすみこ)さん(86)はよく笑う人だ。2月、神奈川県平塚市の自宅に初めてうかがった時、明るい語り口が印象的だった。

 だが、話を聞いていると、その笑顔の奥に72年前の悲しい体験がそのまま刻まれていることがひしひしと伝わってくる。

 当時、長崎県立高等女学校3年生だった近藤さん。動員先の三菱兵器大橋工場(現・長崎大文教キャンパス)で被爆し、顔に傷を負った。右ほおにある一筋の線は、その時の傷の痕だ。触らせてもらうと、くっきりと痕がわかり、その生々しい感触が手に残った。

 体だけではない。心の傷も今もある。爆心地近くの職場で亡くなった父、戦争にかり出され亡くなったいとこ、被爆後に自ら命を絶っていった友人たち。身近な人の死を多く目の当たりにしてきた。取材中、笑顔だけではなく、涙を何度も見せた。

 「息子にも話したことはないんですよ」という体験。聞かせてくれた話をしっかりと伝えたい。

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 近藤さんは1930年、朝鮮…

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