(関西食百景)傘ふっくら 菌育つ森

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文・伊藤誠 写真・佐藤慈子
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京都・南山城村の原木シイタケ

 山すその傾斜地にあるビニールハウスに入ると、長さ90センチのホダ木がぎっしりと並んでいた。その数、約1200本。鬱蒼(うっそう)とした森にいるようだ。

 1本1本に、もっこりしたシイタケが無数に生えている。農家の西村秀俊さん(64)が、出来具合を見ながら一つひとつ摘み取っていく。一つ摘むたびに「パキッ」と小さな音がした。

 京都府南部、奈良県境の山あいに広がる南山城村。人口3千人弱の村ではシイタケの原木(ホダ木)栽培が盛んだ。家庭の燃料が木炭からガスに替わる1960年ごろ。炭の原料として伐採していたクヌギやナラの需要が急減した。一部の農家が丸太をシイタケの原木栽培に使う試みを始め、徐々に広がった。

 晩秋から早春にかけ、特産のお茶の農閑期に副業で栽培する農家が多い。西村さんも本業はお茶農家。ハウスの背後には、斜面に沿って茶畑が広がる。

 1本10キロ前後あるホダ木を使う原木栽培は重労働だ。木の交換やシイタケ菌の植え付け、山林での伏せ置きなど力仕事が多い。滑車付きクレーンや小型運搬車が欠かせない。こうした問題から、近年は全国的に人工の培養材を使う菌床栽培が主流になっている。

 西村さんは原木栽培にこだわる。「手間ひまをかけた分、味に表れると信じていますから」

ゆっくり たっぷり 養分蓄えてコリッ

 西村秀俊さんが住む京都府南山城村の童仙房(どうせんぼう)地区は、標高約500メートルの高原だ。今は約80戸あるが、明治初めに府が入植者を募って開拓するまでは、無住の地だった。

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 先祖が新潟から入植した西村…

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