(関西食百景)ここだけの話―3月5日配信

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野村杏実 青山芳久
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(取材余話)コクがあるのにさっぱり味

 「鬼北熟成きじ」との出会いは昨年11月。道後温泉松山市)の老舗旅館が考案した県産ジビエのコース料理のお披露目会を取材した。フレンチと中華の2種類があり、県内で捕獲されたイノシシやシカの肉とともに食材として使われていたのが、鬼北熟成きじだった。

 シェフによると、キジ肉はフレンチでおなじみの食材という。試食したキジ肉のロティ(ロースト)は、コクがあるのにさっぱりしていて、鶏肉とは違う風味。おいしい!

 会場にはキジの顔を模した帽子をかぶった男性がいた。鬼北きじ工房の工房長、丸石則和さん(35)だった。話を伺うと、12月から2月はちょうど出荷時期になるという。めったに食べる機会がないキジなら、珍しいので読んでもらえるかも……。早速、取材に取りかかった。

 「鬼北熟成きじ」の特徴は、ブランド名にもなっている「熟成」だ。丸石さんによると、フランス語で熟成を意味する「faisandage」はキジ「faisan」に由来しているという。熟成を経て、肉の風味を引き出すというわけだ。

 丸石さんは「同僚からは最近、私のキジ愛が(周囲にとって)重い、と言われるんです」と苦笑いしつつも、「うちの町にはキジがあるって、みんなに自慢してもらえるようになりたい。年間3万羽の産地にするのが目標です」と力を込めた。

 生産現場の取材は、生産者部会長の藤城英秋さん(65)とけい子さん(65)夫妻にお世話になった。

 出荷作業の当日。部屋の中に入ると、けい子さんに「キジが飛んできたらケースの陰に隠れるんよ」と注意された。「どうして?」と思ったが、すぐに納得。夫妻が網でキジを捕まえ始めると、他のキジが一斉に逃げ回り始めたのだ。

 大きなバタバタという羽音が小屋中に響く。取材ノートに作業の様子を書き留めていたが、キジが頭上をかすめるごとに、思わず小さな悲鳴を上げてしゃがみこんでしまった。

 そんな私をよそに、夫妻は次々とキジを捕まえる。

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 餌やりなど日頃の世話は主に…

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