癒えぬ苦痛、切々と 被爆者5762人アンケートを読む

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大隈崇
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 放射線、偏見や差別、核廃絶……。約2万2千人に発送し、5762人から有効回答を得た「被爆者アンケート」では、不安や失望を今も抱えながら生きる被爆者の姿が浮かんだ。まもなく広島、長崎への原爆投下から70年。切なる声と向き合い、未来に生かす営みが求められている。

「がん手術12回」「ばい菌と言われた」

 「胃がん肺がん肝臓がんを患い、手術は12回に及びました」(福岡県の75歳男性)▽「40歳から手術を3回受け、すべてがんでした」(神奈川県の75歳女性)▽「母親の胎内で被爆して、先天的に右目が見えません」(東京都の69歳男性)……。

 原爆投下から70年を迎えるにあたって「特につらかったこと」を聞いた質問には、病気で苦しんできたことを記した人が多くみられた。「最近10年間では?」の問いでも、「健康状態の悪化」との回答が2068人(35・9%、複数回答)と最も多かった。

 厚生労働省によると、放射線の影響を否定できない脳血管や循環器など11種類の機能障害を抱える被爆者は、被爆者健康手帳を持つ約18万4千人のうち約15万5千人。国は被爆によって心筋梗塞(こうそく)、がん、白内障などを発症すると認め、因果関係が明白な場合は医療特別手当が支給される「原爆症」と認定している。

 だが、手帳を持つ人が原爆症と認められたケースはわずか4・8%。今も申請を却下された被爆者が起こした訴訟が各地で続く。

 自らの健康に加え、被爆の影響が子や孫に影響していないか心配し続ける姿も浮かび上がった。遺伝的な影響については、日米共同で広島市長崎市に研究所を置く公益財団法人「放射線影響研究所」の調査では確認されていない。だが、「次男が21歳で急逝したのは私の被爆が原因と思い、毎日がつらい」(神奈川県の77歳男性)などと思いつめるケースもあった。

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 最近10年で、差別や偏見に…

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