夏目漱石「それから」(第十五回)三の六

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 代助はちょっと話をやめて、梅子の肩越(かたごし)に、窓掛(まどかけ)の間から、奇麗な空を透(す)かすように見ていた。遠くに大きな樹(き)が一本ある。薄茶色の芽を全体に吹いて、柔らかい梢(こずえ)の端(はじ)が天に接(つづ)く所は、糠雨(ぬかあめ)で暈(ぼか)されたかの如くに霞(かす)んでいる。

 「好(い)い気候になりましたね。どこか御花見にでも行きましょうか」

 「行きましょう。行くから仰…

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