(社説)米中の会談 危機への責任を果たせ

社説

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 二国間の対立を制御し、国際秩序の安定に資する協調を広げる。米中外相が会談で言及した両国の重い責任を履行できるかが今後、問われる。

 ブリンケン米国務長官が訪中して王毅(ワンイー)外相と会談、習近平(シーチンピン)国家主席とも会った。昨年11月の首脳会談以降、両国が要人クラスの対話を重ねてきたことは歓迎したい。

 11月に大統領・議会選を控える米国では、与野党が対中強硬姿勢を競い合う。内向きな政争で外交論議が過熱しがちな時こそ、両国間の冷静な対話を保つことが重要だ。

 中国は、景気回復の足取りがおぼつかない状況の下、米国の企業家らを盛んに招いている。「封じ込め」を少しでも緩めたいところだろう。

 米中の覇権争いは避けがたいとしても、国際情勢の安定化を先導することが、両国が果たすべき務めであると心得るべきだ。

 米側は今回の会談で、ウクライナ侵略を続けるロシアへの中国の半導体輸出などに強い懸念を示した。中国企業への新たな制裁の可能性も示唆したようだ。

 確かに中国の対ロ貿易は大きく伸びており、侵略を間接的に後押ししている。主権尊重や領土の保全など国連憲章を守るというのであれば、中国はロシアへの支援を停止すべきだ。

 ただ、米側もむやみに通商を外交のテコに用いてはなるまい。米政府は今月、中国からの鉄鋼・アルミ製品への一部関税を3倍にする方針を示したが、貿易の国際ルールをゆがめる懸念が拭えない。

 東アジア地域の情勢も憂慮すべき状態が続いている。

 最近緊張が高まるのは南シナ海だ。岩礁の領有権を争う中国とフィリピンの対立が激化している。日米がフィリピンを交えた首脳会談で連携した動きに中国側は強く反発。会談でも「『小グループ』をつくるべきではない」(習氏)と批判した。

 だが、そもそも中国が国際法を無視して南シナ海域の岩礁を軍事拠点化したことが問題だ。台湾に対しても、来月の新政権発足を前に、中国は軍用機を接近飛行させるなど圧迫を強めている。

 中国は自らの強引な行動こそがフィリピンや台湾を米国頼みに追い込んでいると悟るべきだ。米国も力による対抗一辺倒ではなく、堅実な対中対話を続けてほしい。

 中国はロシアに、米国はイスラエルに影響力をもつ。戦火が続くウクライナや中東の問題に限らず、紛争・戦乱の拡大と世界経済の停滞を防ぐための協働の道を両国は探らなくてはならない。

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