(社説)能登の復興 東日本の教訓を生かす

社説

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 被災地の住民や事業者の声を聞き、自然と共生する能登の魅力を高める「創造的復興」を目指す――。この基本的な考え方をどう具体化するか。東日本大震災など過去の災害時の教訓に学びながら、着実に歩を進めたい。

 能登半島地震で甚大な被害が生じた石川県が、発災から3カ月となるのに合わせ、復興プランの骨子案を公表した。2032年度末までを計画期間とし、防災をはじめとする安全・安心対策、生業(なりわい)と暮らしや地域社会の再建について、個別の施策も記した。

 石川県ではなお8千人を超える人が避難生活を続ける。住めなくなった家屋などの解体・撤去がようやく始まりつつある段階だ。被災者への支援に引き続き努めつつ、復興への取り組みを重ねていかねばならない。

 県はプラン策定にあたり、外部の有識者からなる助言組織を立ち上げた。県内外の大学関係者を中心にNPOの代表や社会起業家ら10人の委員で、東日本大震災などで被災者支援や復興にかかわってきた人が過半を占める。

 3月の初会合では委員から、人と人とのつながり方にまつわる提案が相次いだ。

 「被災者との対話的な学びの分科会を設けては。それが復興プランへの参加につながる」「(被災地と何らかの形でかかわる)関係人口を生かしながら参画の仕組みをどう作るか」「人口は減っていく。それを前提に地域社会の活力を維持するとの観点で」

 官と民、被災地と被災地外の垣根を越えて知恵を出し合い、協働する仕掛けが不可欠との指摘である。プランの骨子案にもある程度反映されたようだ。地域の再建を直接担う市町を含め、こうした視座を大切にしながらプランを練り上げていくのが望ましい。

 改めて思い起こしたいのは、東日本大震災後の復興政策が残した課題と教訓だ。

 復興庁は昨年、発災から10年間の施策を「振り返り」としてまとめ、有識者会議に意見を求めた。その指摘には、復興ではインフラ復旧が重視され、人口減少が不可避な中でともすれば施設の整備が過大になったことへの反省がにじむ。

 発災前の東北3県の高齢化率は20%台だった。この10年余にも人口減と高齢化は全国で加速し、奥能登4市町は高齢化率が50%前後に及ぶ中で地震に直撃された。

 「地方の課題解決のモデルに」。石川県はそう目標を掲げる。過疎化がとりわけ深刻な能登地方にどのような解を導けるか。自治体の模索を、国は長い目で支えてほしい。

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    小松理虔
    (地域活動家)
    2024年4月1日22時53分 投稿
    【視点】

    社説のいうとおり、能登の復興が、東日本大震災の反省を踏まえたものになるのかどうか、とても重要な問題だと思います。もちろん、東北とは切り離して考えたほうがいい問題もあるでしょう。いずれにしても、それを検証していくには、今後さまざまな復興計画が

    …続きを読む