(社説)災害廃棄物 処理へ支援を幅広く

社説

[PR]

 使えなくなった家電や家具などの運び出しが続く。家屋の解体・撤去も3月に本格化する見込みだ。こうした作業に手間取れば、被災者の生活再建と被災地の復旧・復興が滞りかねない。国と自治体、官と民が協力し、広域処理をはじめ山積する課題に対応する態勢づくりが急務である。

 能登半島地震の被害が集中する石川県が、災害廃棄物の推定発生量を示した。県全体で240万トン余、平常時の7年分に達する。珠洲(すず)市、輪島市など奥能登が特に深刻で、4市町の合計で59年分の発生が見込まれるという。

 災害廃棄物はまず、被災した市町村が設ける仮置き場に集められる。分別し、金属くずやコンクリートがらなどを売却・再利用に回した後、焼却や埋め立てで処分する。

 8年前の熊本地震では311万トンの廃棄物が出て、6分の1近くを県外で処理したが、完了までに2年かかった。石川県は2025年度末までに処理を終える目標を掲げ、全国に協力を呼びかけている。廃棄物を船で県外に移送することも検討中だ。近隣の府県を中心に支援の輪を広げられるよう、国は調整を急がねばならない。

 仮置き場への持ち込みに関しても、課題は少なくない。

 能登地方では1月中旬から仮置き場が順次開設され、倒壊を免れた家屋での片付けと廃棄物の持ち込みが行われている。修理が難しい家屋の解体・撤去が始まれば廃棄物の量が急増し、仮置き場が不足する事態が懸念される。

 仮設住宅の建設でも直面している用地不足にどう対応するか。被災した市町には、かつて災害に見舞われた全国の自治体から職員が応援に入っている。分別・リサイクルを徹底して量を抑えることを含め、経験を生かし有効な策を練ってもらいたい。

 奥能登はとりわけ高齢化が著しく、作業の担い手が足りない世帯が目につく。

 ここはボランティアに期待したい。片付け作業は被災者が思い出の品や失った家族の遺品を探し出す営みでもあり、精神面での支えにもなる。ボランティアは金沢市を拠点にバスで派遣されているが、参加は県に登録済みの希望者の一部にとどまる。道路や鉄道の復旧状況なども見ながら、参加者を増やす工夫を重ねたい。

 家屋の解体・撤去は、被害状況を示す罹災(りさい)証明書が発行された後になる。市町が所有者からの申請を受けて出すが、現地調査が必要で、ここでも人手が不足している。行政間の応援職員もさらに増やす努力を続けてほしい。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら