(EYE モニターの目)今月のテーマ:福島原発の処理水をめぐる報道

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 ■想定通りにいかないことも

 7月9日付の社説に、国際原子力機関IAEA)の報告書を踏まえれば、「計画通りに運用される限り、処理水放出は科学的に安全とされる基準を満たすと考えられる」とある。だが、技術の運用には想定外も起こりうる。汚染水対策として、氷の壁で地下水をせき止める「凍土壁」も狙い通りの効果を上げていない。政府は報告書の「国際的な安全基準に合致」に安住せず、想定外を見越して責任を果たしてほしい。朝日新聞も、粘り強く報じる覚悟がいる。(辻裕貴 39歳 滋賀県)

 ■放出計画、詳細を知りたい

 放出計画の詳細を知りたい。(1)1日の放出量、(2)処理水の海洋での拡散予測、(3)多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)で除去した放射性物質の保管はどうなっているのか、(4)放出は少なくとも30年は続くというが、処理前の汚染水を保管するタンクの耐久性やALPSの稼働に問題はないのか、などだ。原発事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しも始まらない。事故処理のめどが立たないのに原発回帰を進める政府の姿勢には疑問を覚える。(米山司理〈もりまさ〉 73歳 神奈川県)

 ■個の思い伝え、心に残った

 今回の一連の報道は、国の動きを淡々と伝える記事が多かったように感じているが、デジタル記事の「じいちゃんが再び誇れる海に 漁師をめざす17歳は、マイクを握った」(6月30日)は、一人の高校生の思いをしっかりと伝えていて、心に残った。「数値」で説明されることで頭では理解できても、心では納得できないという「モヤモヤ」が、よく分かった。「漁師たち」と伝えるよりも、一人一人にフォーカスした方が伝わるものがあると感じた。(増田あづさ 43歳 千葉県)

 <事故原発の後始末、長く険しい道のり>

 今夏にも始まる予定の東京電力福島第一原発の処理水放出計画は、増え続ける汚染水の問題が発端です。2011年3月の事故後、東電は、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を冷やすために水を注入しています。建屋内に地下水などが流れ込み、汚染水が増加。そこから大半の放射性物質を除去した後、タンクにためてきました。

 汚染水を増やさない対策は万全でなく、増加量はゼロになりません。今の事態は、10年以上前から容易に想像できた未来と言えます。

 国際原子力機関(IAEA)は報告書で、放出は「日本政府の決定であり、推奨も支持もしない」と記しました。政府の方針について、社会もどう向き合うかが問われています。

 福島第一原発には事故後の作業に伴い、放射性廃棄物がたまっています。肝心の燃料デブリの取り出しは、まだまだ先。事故が起きた原発の後始末がどれほど困難なことなのか。廃炉への道のりは長く険しいと言わざるをえません。

 発電の手段として今後も原発に頼るのかどうか。考える材料を提供することが我々の役割の一つです。この国で、原発事故はまだ続いています。(科学みらい部次長・木村俊介)

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