(EYE モニターの目)今月のテーマ:声欄について

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 ■今の日本を映し出すこと期待

 声欄はいつも、身の回りにいる人の頭の中をのぞくような感じがして、なにか気になるところがあるので、欠かさず読んでいる。5月30日の日本語学校の留学生の方々の意見や、「藤井聡太という存在」というテーマで投稿をまとめていた6月14日の声欄はとても面白かった。示唆に富む内容が毎回多いが、素朴で率直な意見ももっと見てみたい。子どもから大人までより幅広い世代の声や、多様なバックグラウンドの方々の声も聞きたい。声欄が今の日本を映し出すことを期待している。(田中優衣 20歳 千葉県)

 ■身を正して読む戦時中の話

 声欄は、記事とは異なる新鮮さがある。年齢が近い人の投稿は、自分との違いを意識して読む。高齢の方が戦時中の体験をつづったものは、身を正して読む。本に編まれていない市井の人々の声は貴重である。また「声」に対する「声」、ある読者の投稿について他の読者たちの意見をまとめて紹介する特集も好んで読む。これは、教えている大学でリポートの書き方の教材にすることもある。新聞になじみのない学生も、声欄は自分に引き寄せて考えられるため、関心を持ちやすいようだ。(渡辺由之 40歳 兵庫県)

 ■ネットの声には「動き」がある

 スマホを使うようになってから読者投稿欄を読まなくなった。スマホで「ヤフーニュース」やソーシャルメディアを通じて、個人の意見やコメントを簡単に読めるようになったことが大きい。しかも、その意見に対する別の人からの意見も書かれていて「動き」があるので、ついつい読んでしまう。一方、新聞の投稿欄は、昭和の時代から掲載方法に変化を感じられない。実名で自分の意見や要望、感想を述べることは素晴らしいとは思うので、朝日新聞にはもっと工夫をしてほしい。(関口彰 52歳 群馬県)

 ■「介護中」の肩書も認めては

 朝日新聞にとって、声欄とそこに付随する社説が民意の一丁目一番地だと思う。ただ、不満があるのは「無職」という肩書だ。私は40代後半から両親の介護があり、外で働いてはいないものの、「介護という重要な仕事をしている」との自負があった。だが、無職という肩書にコンプレックスがある人は、投稿にためらいを抱くと思う。そこで例えば、「求職中」や「介護中」といった肩書も認めてはどうだろうか。そうすれば、さらに多様な人たちから率直な意見が得られるはずだ。(西田祐美江 64歳 東京都)

 <前例踏襲にとどまらない工夫、今後も>

 多種多様な投稿が並び、時に響き合い、議論のきっかけにもなる。それが声欄です。より身近に感じていただけるよう、「素朴で率直な意見」「多様なバックグラウンドの方々の声」への目配りを一層心掛けていきます。

 その多彩な声をいただく努力も欠かせません。今回、「無職という肩書にコンプレックスがある人は、投稿にためらいを抱くと思う」とのご意見がありました。

 5月の着任後、「無職」という表記でなくてもいいのでは、と問題提起しました。部員からは「場合により肩書なし」「投稿の背景や動機が見える場合は元職で」などの案が出ました。

 「無職」をめぐっては様々な考えがあります。2004年には本紙オピニオン面「私の視点」に載った「無職 こんな呼び方はやめよう」という投稿を機に、声欄でも論が交わされました。中には「誇りを持って使う」との意見もありました。肩書の選択肢の一つとして、投稿者とのコミュニケーションの中で柔軟に対応してまいります。

 スマホ時代のあり方も模索中です。前例踏襲にとどまらない「工夫」を続けていきます。(「声」編集長・西正之)

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

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